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牡丹図 その2 平福百穂筆 その9 

掛け軸というものは陶磁器と違って資料を見て真贋の判断がある程度は可能なものです。落款や印章などでほぼ90%くらいは真贋の判断ができます。それゆえ素人批評家が多い分野でもありますImage may be NSFW.
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陶磁器はそうはいかず、かなりの勉強と経験が必要で素人では無理な世界だと思います。プロについて勉強しないと真贋や時代考証は判断できないと私は思っていますImage may be NSFW.
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さて、本日はその簡単な?分野Image may be NSFW.
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の掛け軸の作品です。掛け軸は真贋を云々するのも馬鹿馬鹿しいくらい値段が安くなりましたが、そこはそれ真贋は別物できちんとしなくてはいけませんね。

絹本着色軸装 軸先象牙 合箱
全体サイズ:横1320*縦500 画サイズ:横365*横365

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本作品は秋田県の角館からの入手。そう平福百穂の出身地です。出身地から出てきた作品ほど真贋には注意を要する画家です。共箱ではなく鑑定書もありません。・・・果たして真贋や如何?

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真作ならば当方で所蔵してる小色紙の作品とほぼ同じ頃の作品ではないかと思われます。

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印章は「三宿翠?房」と思われますが、よく用いた「三宿草堂」と同じ意味かも知れません。

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小色紙の作品より、さらに丁寧に描いた作品となっています。

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共箱や鑑定書は一切ありませんが、表具はなかなかいいですね。

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掛け軸の正規の作品を入手する条件というものがあるとすると、

1.状態が良いこと。できればきちんとした表具店の表具であること。
2.販売店が百貨店や一流の骨董店から買うなど出所がしっかりしていること。また画家本人から譲り受けたりなどの伝来がきちんとしていること。
3.信用のおける鑑定書がついていること。
4.最低条件として共箱であること

以上ですが、こうなるとそれなりの金額で購入しないといけません。値段も通常より?高額となるでしょう。ネットオークションではこのような作品はなかなかお目にかかれません。この条件を満足するように見えて贋作であることもしばしばあるようです。

目利きはこのような条件を満たさない作品の中から本物を選りすぐりできるのでしょうが、小生のような素人では至難なことです。真似事で首を突っ込んでいる次第です。「量より質に徹底したいもの」と思いますがなかなか・・Image may be NSFW.
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最近の掛け軸の骨董事情は

1.値段が暴落していること
2.需要が少ないので売りに出ることが多いこと
3.興味を持つ人が少ないので、遺産として遺された作品を売りに出す人が多いこと
です。

そのために上記の条件を満たさない作品が数多く市場に出回っています。骨董店の御主人も「あまりにも安いのでついつい仕入れてしまいますが、在庫がたまってしかたがない。」とぼやいていました。

集めるにはいい条件が揃っていますので、ある程度の知識があるとそれなりの作品は集まります。ただ上記の条件を満たしていないと売値は二束三文です。掛け軸の骨董蒐集は金儲けには絶対になりません。本作品がたとえ本物でも売り値はおそらく数万円ならいいほうで、下手をすると数千円です。

ところで平福百穂の作品で注意を要するには印刷作品が多いということです。

印刷作品には通常「工芸印」が押印されるのですが、平福百穂の作品の場合はそのことが浸透する以前と思われ、通常の印章が押印され、手採色されると全く印刷とは素人目には解らないものとなるので注意を要します。

参考:工芸品の二作品

山水図 平福百穂筆 工芸作品 その1
紙本水墨印刷 絹装軸 軸先象牙 合箱
全体サイズ:横680*縦1360 画サイズ:横480*横400

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左下に「癸酉夏日 百穂」とあり、1933年(昭和8年)の夏の作品で平福百穂の没年の作品の印刷でしょう。印章は「三宿草堂」とあり、真作と同一印章だと思います。

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表面のつるつる感と第一印象の「のっぺり感」以外は肉筆と区別がつきません。

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実によく出来ているので、飾っておく分には申し分ありません。

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汚れたり、何かあっても支障のないところに飾っておくには印刷作品はもってこいです。

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しかし、これに一部に墨で書き込んだりして、真作として売買されると・・。

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このような作品と真作の箱と中身を取り替えたり、鑑定書を偽造したり・・。

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さて、もう一つの工芸品。

双鶴図 平福百穂筆 工芸作品 その2
紙本水墨淡彩印刷 絹装軸 軸先鹿角 合箱
全体サイズ:横435*縦2100 画サイズ:横270*横12

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こちらは少しは印刷と解りやすい?当方は売買目的で所有しているのではありません。あくまでも参考作品・・。

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中国ではこのような印刷や版画を贋作としないから、より恐ろしい・・。

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印章も真作と同一印章らしい。

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中国の「斉白石」、「呉昌碩」は版画による工芸品が多いので要注意とか。

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印章や落款にこだわる人ほど意外と印刷の作品にひっかりやすいものだそうです。「木を見て森を見ず」というものでしょうか?

竹内栖鳳ら同時期の日本画家の作品はいいと思ったら、次に印刷か否かを疑ったほうがいいでしょう。手彩色でない作品は割とすぐに判断できますが、彩色されていると素人では全く解りません。ネットオークションでは肉筆保証と称して売られているから余計に区別が難しいようです。

骨董蒐集でお金をなるべく掛けない蒐集は頭脳ゲームかもしれないません。あらゆる可能性から判断する必要があるようです。それが嫌なら賢くお金をかければいいだけです。

さて連休に家内の実家へ行くと六種類の牡丹のうち四種類の牡丹が咲いていました。早速長男の幸紀と記念撮影。

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作品にまたひとつ思い出ができました。骨董の愉しみというものは真贋もさることながら、こういう思い出作りが一番です。これが本当の「木を見て森を見ず」にならないということかもしれません。

骨董蒐集だけではありなせんね。人生においても「木を見て森を見ず」にならないことが肝要です。家族、健康、友人、金銭、地位、名誉・・、何が大切かを忘れないことです。




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