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塩谷高貞妻 伝渡辺省亭筆 その22

年末にはお世話になった人の配る落花生の袋詰めです。収穫から天日干し、殻剥き、選別、炒るという工程を経て、大いなる手間をかけての仕上がりです。意外に評判がよく「美味しい」とのこと。息子も手伝っており、飽きることなくず~と袋詰め、「手が小さいから一番早いね!」と自慢げです。

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さて本日は「その22」となった渡辺省亭の作品の紹介です。

渡辺省亭が師事した菊池容斎の代表作品が「塩谷高貞妻出浴之図」(福富太郎コレクション)です。その弟子・渡辺省亭の「塩谷高貞妻浴後図」、「塩谷高貞」の2図が「刺青とヌードの美術史」(宮下規久朗著 NHKブックス)に2008年刊白黒図版で取り上げられています。この作品はその「塩谷高貞妻浴後図」か「塩谷高貞妻」の作品の可能性があるかもしれませんが、「塩谷高貞妻浴後図」か「塩谷高貞妻」と題された作品が幾つか存在している可能性もあります。

そのような作品へのロマンはさておき、本日の主題はその歴史的な背景です。

塩谷高貞妻 渡辺省亭筆 その22
絹本水墨着色軸装 軸先骨 合箱
全体サイズ:縦2070*横640 画サイズ:縦1200*横492

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塩冶高貞(えんや たかさだ、旧字体:鹽冶 髙貞):生年不詳~1341年(興国2年/暦応4年)。鎌倉時代後期から南北朝時代にかけての武将。出雲守護として、後醍醐天皇の挙兵に呼応し、鎌倉幕府との戦いに貢献する。建武の新政ののちは、足利尊氏に味方し、南朝方制圧に力を奮ったが、1341年3月に京都を出奔すると謀反として北朝に追討され、同年翌月出雲国で自害した。

このストーリーは以下のとおりです。塩冶高貞のライバルの高師直は、塩冶高貞の妻「顔世御前」が美人と聞き及び、浴後の姿を盗み見し横恋慕し、徒然草を著して高名であった吉田兼好に恋文を書かして、塩治高貞の妻に送ったが拒絶されたという。

出雲国と隠岐国の守護であった塩治高貞はこの直後、京都を出奔し出雲に向かうが謀反の疑いをかけられ、討滅されてしまったが、この塩谷高貞の滅亡は高師直の陰謀によるものだという。

これは太平記にあるエピソードですが、塩谷高貞が突然謀反に問われ滅亡したのはまぎれもない史実であり、晩年の吉田兼好が高師直と交流があったのも史実だそうです。このエピソードは江戸時代に起こった忠臣蔵事件の演劇が、塩治事件の人名を置き換えて上演された為に有名となった。

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*高貞は天皇に従って先導役を努めたその功績によって高貞は出雲守護となり後醍醐天皇より側室を降下されます。それがこれが絶世の美女と謳われた顔世御前(かおよ)です。


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**高師直が顔世御前に恋焦がれ浴後の姿を盗み見したのは、実はすっぴんの顔を見たら諦めるだろうという従者らの配慮であったという説があります。、

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***京都市立博物館に所蔵される伝尊氏像と言われる髻を切った騎馬武者像は教科書では尊氏像とされていますが、実際は高師直と言われています。一方神護寺に所蔵されている、伝源頼朝像と伝平重盛像こそが実は頼朝像が足利直義、重盛像が足利尊氏と言われており真実のほどは定かではありませんが、今は定説となってきています。この説が本当だと直義は相当の美男子で、尊氏は優しげで猛将とはかけ離れた顔立ちだったと思われます。

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****塩治高貞が京都を出奔したのは高師直の讒言により殺されるのは逃れるために出雲に向かったいう説もあり、顔世御前と別々に向かい、先に顔世御前が追手に追われ自害しています。

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幼い子らも犠牲となったようです。げに恐ろしきは女癖の悪い執着心強い男・・。美人に執着したら碌でもないことになるということもありますが・・・。

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女への執着心は早いうちに絶つことです。生涯に一人の女性を愛すればことは済む。

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本作品の落款と印章は下記のとおりです。

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渡辺亭の作品は意外に共箱は珍しく、本作品は相変わらず合箱です。

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下記の作品は明治22年の「国民之友」の山田美妙の歴史小説「蝴蝶」に渡辺省亭による挿絵が描かれた作品が掲載されています。

平家に仕える美少女の蝴蝶が、壇ノ浦の戦いで海に落ちて這い上がったときに若武者に出会うという場面を描いた作品です。裸体の少女は衣を手に持ち、局部は隠されていて、とくに目立つところもない構図ですが、山田美妙が本文で、「美術の神髄とも言うべき曲線でうまく組立てられた裸躰の美人」と書いたため、これが挑発的であると受け止められ、「読売新聞」の投書に「美術の乱用」だという批判が載り、いわゆる「裸蝴蝶論争」をひきおこしたそうです。これを「裸蝴蝶論争」といいます。

よってこの時代には「渡辺省亭=ヌードの画家」と認識された人も多かったようです。

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渡辺省亭は師である菊池容斎の代表作品の「塩谷高貞妻出浴之図」と同じ画題の作品を描いています。下記の写真はともに福富声r九ションですが、左が菊池容斎の代表作品の「塩谷高貞妻出浴之図」、右が渡辺省貞の「塩谷高貞妻」の作品です。

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上記の右の作品と本作は同じほぼ同じ構図です。

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他にも同題の作品が見受けられます。下記の作品は印章のみです。こちらも真贋はよく解りませんが70万円で売られています。

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渡辺省亭も贋作が多く、注意すべき画家のひとりには相違ないようですね。

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本作品は前述のように福富コレクションの「塩谷高貞妻」の作品と賛のない同図ですが、模作ではないと判断しています。根拠のひとつは線描がきれいなことです。

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渡辺省亭の作品は贋作も多く、その見極めは当方ではまだまだ自身がありませんが・・・。

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渡辺省亭の作品はまったく同じ構図の作品がいくつか存在します。しかも大きさが違うものでも・・・、このあたりがまた真贋の判断を難しくしている点です。

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後ろの描かれている女性の描き方もうまい。

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小道具の描き方には違いがありますね。

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真作と判断したのはこの線描と上品さは真似できるものではないとの根拠からです。これは感性しかありませんね。

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