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贋作考 戊辰四幅のうち秋冬双幅 釧雲泉筆 文化5年(1808年)頃など

今まで蒐集してきた釧雲泉の作品の中に「寒江独釣」・「秋渓覚句」という作品があります。この2作品はその作品らの本ブログでの記事に掲載のとおり「大正七年十月の當市高田氏及某家所蔵入札目録(東京美術倶楽部開催)」に掲載されている作品と同題、同図の作品です。

下記の写真がその目録です。

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作品NO28として、夏と秋の双幅の作品が掲載され、「夏山聴雨」と「秋渓覚句」と題されています。

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また作品NO42として、冬と春の双幅の作品が掲載され、雪景の冬の作品に「寒江独釣」とあります。

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この4幅はもともと四幅対であったと指摘されているようですが、定かではありません。

二幅ずつになって掲載されているのは表具サイズが二幅ずつになっているからでしょう。もともと四幅であったというのも推測が入っておりますが、ただ確証はありませんが高い確率で四幅対を意図して描かれたように推測しています。

この作品らは有名であったようで、特に雪景山水図の「寒江独釣」と浅絳山水図の「秋渓覚句」には依頼されての複数の作品が実際に描かれ、そして他者による模写(または贋作)があると推測しています。

当方ではこの作品で「寒江独釣」を二幅、「秋渓覚句」を一幅所蔵しています。他にも似たような構図の作品をときおり見かけましたが、それらは明らかに落款などを含めて明らかに贋作のようでした。

その「寒江独釣」を二幅においては表装が痛んでいたので改装しました。そこで両幅を改めて並べて比較してみました。

寒江独釣 釧雲泉筆 その1 寛政年間 & その2 文化5年(1808年)頃
水墨淡彩紙本緞子軸装 軸先鹿角 合箱二重箱
全体サイズ:縦2045*横736 画サイズ:縦1497*横606

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この二幅は大きさが若干違います。掛けている状態は作品自体の上を合わせていますので、右の作品が短めになっていることがお分かりいただけると思います。

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どちらかを模写したかもしれませんが、明らかに落款の書体が違います。この落款や印章で贋作や模写とは断定できません。まずはこの違いは製作した年代の違いだろうと推測するのが妥当のようです。

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左の大きめの作品(その2)がその落款から文化5年(1808年)頃と断定でき、右の写真の小さい方の作品は落款の書体からそれからだいぶ前、おそらく寛政の頃に描いた作品だろうと推測されますね。

たとえば贋作や模作だとしたら、ここまで構図をすっかり似せて落款だけ別の書体というのも不自然です。

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真作なら製作時期は掛けている右の作品(NO1)が早く寛政年間、左の作品(NO2)は文化5年(1808年)と推測されます。

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ほとんど同図の作品で、模写作品とするにしても、脇に写真か作品本体ががないと描けないかもしれません。僅かに「寒江独釣 その2」のほうが白黒の対比を明確に強調されている色調です。所蔵者か所蔵する団体が理由があって模写作品を作成したかもしれませんね。

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推測ですが釧雲泉は早くからこの四幅の作品の構想をもっていたように思います。他の三幅に先駆けて雪景山水図の「寒江独釣」の構図を煮詰めていたのでしょう。

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この図はおそらく複数存在し、さらに模写が多数存在するようです。他者による模写の作品は落款や印章、出来がいい加減な作品が多いですが、中には稀にいい出来の作品があるようです。

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当方では上記の右の作品「寒江独釣 その1」は寛政年間に描かれた単品での作だろうと推測しました。

寒江独釣 その1 釧雲泉筆 寛政年間頃
水墨淡彩紙本緞子軸装 軸先鹿角 合箱二重箱
全体サイズ:縦2045*横736 画サイズ:縦1497*横606

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この作品は模写(贋作)というには落款の説明ができないので、これは真作と判断しました。

そこで次に「寒江独釣」(NO2)ともうひとつの作品で所蔵する「秋渓覚句」との双幅としてみました。これらは入札目録では別々の双幅となっていたようですが、それは後世の表具によってサイズが違っていたからと推測されます。この両作品の入手時もそのようになっていました。ただ作品自体のサイズはほぼ同サイズであったので、表具も痛んでおり、当方にて改装して双幅仕立てにしました。

戊辰四幅のうち秋冬双幅
寒江独釣・秋渓覚句 釧雲泉筆 文化5年(1808年)頃

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「寒江独釣(NO2」)と「秋渓覚句」はほぼ目録の作品と同図ですが、同一作品とは判断していません。「秋渓覚句」もまたかなりの数の同図の作品が存在します。ただ見かけた「秋渓覚句」も他の作品は稚拙なものが多かったですが、これも同じ「寒江独釣」と理由でしょう。

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入札目録の作品が何らかの理由で市場に出てきた可能性があるとは言えないでしょう。

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もともと入札目録の作品が真作という保証はありません。

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両作品の落款は上記のとおりです。

*なお印章は釧雲泉の作品にはよくあると当方では考えていますが、印影に違いのある印が多々あります。神経質に判断すると過ちを起こす可能性があります。

本ブログの記事の内容が理解できない方もおられるでしょうが、意外にマニアックな内容でしょうから致し方ありませんね。

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模写と考えるのが妥当と思う方がいるでしょうね。当方もその考えは捨ていません。なにしろ当時はかなり高価な作品だったのでしょうから・・・。今はお小遣い程度?の値段です。当方はいたって気軽に考えていますが・・・Image may be NSFW.
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たんなる模写として、贋作として処理するは簡単ですが、それはそれでおしまいです。ともかくここまで整理するのには多大な労力が必要でした。

*愛好者の「すぎぴい」さんのコメントはたいへん参考になりました。本当にありがとうございました。この場を借りました改めて深く御礼申し上げます。

真贋の判断に迷った作品ですが、迷った末にあげくに行き着いたのは、贋作という思いもありながら、この作品は双幅で飾って愉しむこと、「笑わば笑え」ということでしょうが、本日はここまで・・・・。






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