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新発見? 月下猛虎図 大橋翠石筆 明治40年代(1907年)頃

家族皆で採ってきた畑のプラムの花、家内が活けてくれています。

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生けているのはお気に入りの古信楽の壺。後方の軸はまくりで入手した小松均の四幅対の作品から双幅として掛けている作品です。

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古信楽の口造りは「大きく外に反った形から、口頚部が直立し口縁部が外に反る形となり、室町時代末期になると、玉縁状の口造りになります。」と言われていますが、私はすべてがそうだったとは考えていません。全体の傾向はそうであっても積み上げる使い方をする壺はかなり前(室町期)から丈夫な玉縁状の口造りになっていたと思います。

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また形には「肩の張りが強い形の物が一番古く、次に肩の線が上がり端正な形になります。やがて次第に撫肩に成りながら、肩の線が下がりながら美しい形に成ってゆきます。」というのもすべてにはあてはまらないと思っています。

ともかく時代によって評価を変えるのではなく、作品そのものが美しいかどうかが評価ポイントであり、その評価は壺を撫でて評価するのではなく、当然花を活けたり使って評価するものべきものでしょう。

この信楽の壺は小生のお気に入りの作品で、この作品より使いやすくて美しい古信楽の壺は観たことがありません。ただど~んと飾るだけなら評価は別でしょうが・・。

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この壺も水を入れるとじわ~と水が沁み出してきます。これが古信楽の魅力でもあります。水が染み出ない古信楽の壺は使って楽しみがないものです。

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さて本日の作品は保存箱もなく、シミや痛みがあって打ち捨てられていた作品でしたが、落款と印章から大橋翆石の初期の作品と判断して入手しました。当方で確かな判断のできるものではないのですが、ちょっと検証してみました。

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月下猛虎図 伝大橋翠石筆 明治40年代(1907年)頃
絹本水墨淡彩軸装 軸先木製 誂箱 
全体サイズ:横635*縦1945 画サイズ:横510*縦1250
分類A.青年期から初期 :1910年(明治43年)夏まで  ~46歳

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画風はたしかに初期の頃のものです。この時代は毛描きの描き方が白、黒、茶などでされ、毛書きの本数(筆数)はかなり多いものです。この時代の作品は共箱ならば大垣の文錦堂の表具がされていることが多いとのことですが、本作品の表具はそうではないようです。

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まず落款は「点石翠石」と言われる落款の「石」字の第四画上部に点が付されている1910年(明治43年)夏までの落款であり、さらには翠石の石が鍵石という文字になっていますので、初期の作と一致していると推定されます。この頃の作品だとたしかに共箱でない作品はあり得ますが、著名な大橋翆石の作品が打ち捨てられてように放置されているとはちょっと考えにくいですね。

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描いているのは月下にて虎が毛づくろいしていている様子で、舌が少し描かれています。大橋翆石の作品では舌が描かれるのは珍しいと思います。

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描き方は初期の大橋翆石の相違ないようです。

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ただ「大橋翆石の贋作は初期の作風の作品が多い」ので要注意です。晩年の作は書き込みが多く真似でないのかもしれません。

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次に印章の検証(印章は使用されたいた時期の後半以降のものと思われ、擦れている部分が多いので、点翆石の落款の最終年頃か?)です。左が本作品ですが、大正初期の作品に押印された作品と比較してみました。

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「点翆石」の落款の作品から(基本的に同一印章の作品から抜粋)印章を抜粋してみました。落款と印章ともになんとも言い難い?

数多くある贋作ではこの程度の検証でだいたい判別できるのですが、まだ真作とするには慎重を期する必要があります。

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画風をもう少し検証してみましょう。まずはともかくこの頃の作品は鼻がでかい! 下記の写真は当方の同時期作の所蔵作品との比較ですが、これは画集に掲載されている作品でも同じですね。

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本ブログで紹介した「正面之乕」・・、小生のお気に入りの作品で 初期から晩年にかけても大橋翆石の作品においてこの作品よりいい作品は観たことがありません。

正面之虎 大橋翠石筆 明治40年代(1907年)頃
絹本着色軸装収納箱二重箱 所蔵箱書 軸先本象牙 
全体サイズ:横552*縦2070 画サイズ:横410*縦1205
分類A.青年期から初期 :1910年(明治43年)夏まで  ~46

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もう一点「臥乕」・・、この作品は???

臥乕之図 大橋翠石筆 
絹本着色軸装 軸先本象牙 自署鑑定共箱 
全体サイズ:横640*縦2140 画サイズ:横490*縦1246

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もう一点検証したのは「月の描き方」です。同時期に描かれた画集に掲載の作品と比べてみました。

「月下親子虎之図」(絹本着色 松本松栄堂所蔵)

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上記の作品の月が左、本作品が右です。

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月の描き方で真贋の判断をするというのも無理があるでしょうが、本作品はかなりいい線にいっている作品だと考察しています。問題は痛みが多いので、改装までして遺すべき作品か否かの判断ですが、これに踏み切るには今少し知見が必要かもしれません。

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現段階での当方の判断では、稚拙なところはあるものの明治40年代(1907年)頃(以前)の真作の可能性があるとみなしています。表具を改装して保存箱をきちんとしておく必要のある作品か否かの判断にはまだ躊躇しています。

こういう時期が骨董の真骨頂の愉しみ・・・、素人が「真作と信じ込む、贋作と決めつけるのはすべてにおいて危険」です。


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