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入江図 寺崎廣業筆 大正4年(1915年)夏 その98

本日の作品は、寺崎廣業が晩年になる大正期において作品を描いた時期が落款に記された貴重な作品です。さらに筆致が寺崎廣業にしては珍しく、新たな挑戦をした時期の作品でもあります。

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入江図 寺崎廣業筆 大正4年(1915年)夏 その98
絹本水墨軸装 軸先骨(入手時には片側欠損) 合箱
全体サイズ:縦1990*横560 画サイズ:縦1130*横420

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大正4年の七月には寺崎廣業は信州の上林に赴き、しばらく滞在していますが、この前年には「松原」を描いた画帖があったりしており、信州に居ながら日本海側や太平洋岸の海の景色を描いていた可能性があります。

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またこの同年、大正4年には水墨の濃淡や細線を使い分けた巧みな表現で「信濃真景一二図」という代表作を生み出しています。本作品もそのような時期の筆致による作品であり、晩年の寺崎廣業の新境地と言える貴重な作品となります。

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共箱や鑑定書などは一切ありませんが、印章も確認するまでもなく、寺崎廣業の晩年のいい出来の真作と判断して購入したものです。

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印章は寺崎廣業の作品ではほとんどの印章が押印された作品が当方では揃ってきていますが、今回の作品では初めての印章があります。

*作品中の印章:左
  資料の印章:右です。

下記の印章は亡くなる直前(大正7年)の作にも押印されています。

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下記の印章は資料にはありましたが、当方では押印された作品では初めてです。

*印章の資料だけで真贋の判断をするのは禁物ですね。画家ひとりについてさえ印章の資料がすべて揃っている資料などは、竹内栖鳳の資料を除いては見たことがありません。資料にない印章もあることがあり、また押印されたものでも微妙に違うものは存在します。修正したり、絹本で歪んでいたりと理由は様々ですが、印章ではなく常に作品そのものを観ることが大切です。

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共箱ではありませんが、表装は上等のようです。

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ただし象牙の軸先の片側が欠損しています。軸先の欠損は保管をきちんとされていない掛け軸にはよく見かけます。軸先が外れた時点で修理すると簡単に直るのですが、軸先が欠損していると表具師に依頼して両側を新たに付け替える必要がありますが、最近は象牙での軸先の手配は難しいようです。近々、表具師の依頼して直そうと思っています。

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本ブログでの繰り返しになりますが、いくら資料を揃えて睨んでいても、何度も美術館や図書館で勉強しても、思い切って購入しないと決していい作品は蒐集できません。一定レベル以上の作品を身近に置いて時間をかけて繰り返し観て、その後にひと目で見抜く審美眼が醸成されることが真作に辿りつくには必要なステップなのでしょう。費用をかけて、時間をかけて、労力をかけないといけませんね。修理もまたそのひとつです。



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