入手後は棚にしまったままにしていたので、探して使ってみることにした幾つかの茶碗のひとつです。この作品、その造形美は織部に負けない・・・??。
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記述のとおり新たな入手の作品ではなく、10年ほど前に投稿した作品記事のリメイクです。
リメイク 山茶碗 その1誂:合箱+塗二重箱最大幅165*最大奥行135*底径75*高さ46~65
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本作品は山茶碗と称する分類となりますが、山茶碗(やまぢゃわん/やまちゃわん)は、平安時代末(12世紀)から室町時代(15世紀)にかけての東海地方で生産された無釉陶器の作品群です。灰釉陶器の系譜に属し、美濃・尾張・三河・遠江などの窖窯で生産されたとされています。
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「山茶碗」という名の由来は、山に造られた窯跡から沢山出てきたので山茶碗と名付けられたようです。詳細には愛知県名古屋市東部や豊田市を中心に分布する猿投窯(三大古窯の一つ)で生産された、日本最初期の人工施釉陶器である「灰釉陶器(白瓷:しらし)」の系譜に連なり、「白瓷系陶器」とも呼ばれるものを「山茶碗」と称するようです。
「灰釉陶器」は、8世紀末の生産開始当初こそ高級食器として精巧に作られましたが、東海地方各地で焼かれるようになると次第に粗雑化し、11世紀末頃には各地の窯場が施釉技法を放棄して量産化を指向するようになり、これ以降の製品が現代の考古学用語で「山茶碗」と呼ばれるようになったとされています。
*本作品がいつ頃の時代の作なのかは当方では詳細は解りかねますが、「8世紀末の生産開始当初に高級食器として精巧に作られました」に属するものではないかと推察しています。
猿投窯以外には、瀬戸市の瀬戸窯や小牧市周辺の尾北窯、知多半島の知多窯(常滑窯)、渥美半島の渥美窯、岐阜県各務原市周辺の美濃須衛窯、同県多治見市周辺の東濃窯(美濃窯)のほか、静岡県東部地域(湖西窯など)でも生産されるようになったとされています。
当初は薄手の茶碗でしたが、粗雑化してくると土は荒々しく石英の粒が吹き出しています。一説には、窯で焼いた壷や瓶等に被せておく為に作られた蓋であったという説があります。
*下記の作品は粗雑化した例としての参考作品です。
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山茶碗は、一般的に平安時代の末ごろから鎌倉時代全般ごろまでの間にかけて、瀬戸をはじめその近郊の常滑や猿投の製陶地で焼かれた簡単な形状の皿や浅い碗を呼びます。極めてシンプルで無駄なく形作られ、粗暴とも見えるこの焼き物の中には力強い存在感がある作品が稀に存在します。反面雅味深い静かな美しさが備わるものが最上とされます。昔はそれほど人気がなかった様ですが近頃では良品を見つけるのはなかなか難しくなったようです。
*下記の写真は出土状況の作品です。
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*本茶碗は出土時に破損していたものを補修したのではないかと推測しています。
山茶碗は、本来は無釉の状態で焼かれたものでしたで、20個から30個の器を積み重ねて焼いたようですが、不思議な事はそれを焼いた窯跡からは,破片だけでなく完器のままで多く出土します。上記写真右のように重ねたそのままで焼き付いてしまって発掘されるものもあります。
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須恵器窯の高温状態で焼かれた為に、器のまわりには燃料に使った松木の灰が窯の中に舞って降りかかっています。その木灰は高温の為に溶け、降りかかった器の土に含まれている鉄分と化学反応を生じ、偶然にガラス質の釉薬となります。その“自然の釉”は、灰緑色や時にブルーの色となり器に美しい景色をもたらします。器肌の色は灰白色のものが多く、いくぶん褐色を帯びた灰黄色をしているものもあり須恵器系窯で焼かれた事は間違いありません。中には瀬戸の様に穴窯でやかれたと見えるものもある様です。
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胎土には石英や長石などの小砂粒が混じっていて、古い時代のものほど雅な味わいが深く、端正で均衡のとれた形をしています。
*下記の写真は上出来となる参考作品です。
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作りも薄くかなり堅く焼き締まっていて、古い時代のもの程自然釉も多くかかっていますが、時代が下がってくるにつれて作も粗雑になり、素地も粗く自然釉はあまりかからなくなる傾向にあります。
山茶碗の特徴は基本的に釉を施さず、粗い粒子の胎土を持つ灰色ないし黄灰色の陶器ですが、淡緑色の自然釉がかかるものもあります。器種は碗・小皿・鉢・壺などの作品がありますが、碗と小皿が特に多いようです。碗や小皿は、やや内湾して立ち上がる胴部をもち、下に高台(付け高台が多いようです。)が付いています。焼成時に製品を重ね焼きしますが、その際、下の製品に高台が癒着しないよう籾殻を敷いたため、高台縁に籾殻の圧痕が残る製品があるようです。
山茶碗は12世紀から15世紀までのおよそ400年にわたり生産され、当初は灰釉陶器の形態を引き継いでいましたが、時代が下るにつれて碗の胴部の立ち上がりが直線的になり、小皿は扁平化し、多くの器種で高台が省略されるなど簡略化していく傾向が見られます。
製品の流通圏は、ほとんど地元の東海地方であるため、庶民向けの日常雑器として使われたと考えられますが、内面が摩滅したものや、「卸目」を持つものが一部にみられることから、食膳具としてだけでなく調理器具(捏鉢など)的機能をも持っていたとする意見もあるようです。
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この造形美は茶人には好まれるものでしょうが、家内はどうも土臭いという・・・・・。決して実際には匂わないのですが・・・。
茶事の茶碗として用いることのできる山茶碗はかなり少ない、というか稀有のもののようです。見込みは茶筅が痛まないように滑らかなこと、自然釉のかかり具合など景色が優れていること、形に趣のあること、高台がキチンとしていて持ちやすいことという茶碗としての必須条件のすべてをクリアする作品はまずない・・・。本作品はこれらの条件をすべて兼ね備えています。高台は付け高台かな・・??
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濡らしてみると自然釉のかかった部分が解りやすくなりますね。
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見込み部分がきれいのは茶碗として重要な事項でもあります。一般的な山茶碗では重ねて焼成されているため、茶碗としての用いる可能性のあるのは最上部の作品のみ?となるようです。
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粗雑な造りの一般的な山茶碗は下記のようなものでしょう。
山茶碗 その2一部補修跡有 誂箱口径132~135*底径50~60*高47
前述のように山茶碗は12世紀から15世紀までのおよそ400年にわたり生産され、当初は灰釉陶器の形態を引き継いでいましたが、「時代が下るにつれて碗の胴部の立ち上がりが直線的になり、小皿は扁平化し、多くの器種で高台が省略されるなど簡略化していく傾向」が見られます。本作品のこの説明のように時代の下がったものと推察されます。
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ちょっと分厚く、石英のぶつぶつが如実に出ています。
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この程度のちょっと出来の良い山茶碗でさえ見つけるのにはひと苦労です。
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釉薬は自然で野趣あふれる・・???
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これも最上部のものか・・??? 見込みは前に使っていた方が研磨した可能性、もしくは「卸目」を持つもの・・・??。
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高台脇の自然釉が緑色になっており、高台は明らかな付け高台になっています。
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この作品は山茶碗としてはまともなほう?ですが、茶碗として用いるのにはぎりぎりかな? 小服茶碗程度の大きさですが、食器には最適・・・??
時代の下がった山茶碗は基本的には茶事の茶碗には向いていないようですね。
*なお最初に紹介した山茶碗は茶事の茶碗としてもよく、本ブログで好評であった作品です。
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記述のとおり新たな入手の作品ではなく、10年ほど前に投稿した作品記事のリメイクです。
リメイク 山茶碗 その1誂:合箱+塗二重箱最大幅165*最大奥行135*底径75*高さ46~65
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本作品は山茶碗と称する分類となりますが、山茶碗(やまぢゃわん/やまちゃわん)は、平安時代末(12世紀)から室町時代(15世紀)にかけての東海地方で生産された無釉陶器の作品群です。灰釉陶器の系譜に属し、美濃・尾張・三河・遠江などの窖窯で生産されたとされています。
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「山茶碗」という名の由来は、山に造られた窯跡から沢山出てきたので山茶碗と名付けられたようです。詳細には愛知県名古屋市東部や豊田市を中心に分布する猿投窯(三大古窯の一つ)で生産された、日本最初期の人工施釉陶器である「灰釉陶器(白瓷:しらし)」の系譜に連なり、「白瓷系陶器」とも呼ばれるものを「山茶碗」と称するようです。
「灰釉陶器」は、8世紀末の生産開始当初こそ高級食器として精巧に作られましたが、東海地方各地で焼かれるようになると次第に粗雑化し、11世紀末頃には各地の窯場が施釉技法を放棄して量産化を指向するようになり、これ以降の製品が現代の考古学用語で「山茶碗」と呼ばれるようになったとされています。
*本作品がいつ頃の時代の作なのかは当方では詳細は解りかねますが、「8世紀末の生産開始当初に高級食器として精巧に作られました」に属するものではないかと推察しています。
猿投窯以外には、瀬戸市の瀬戸窯や小牧市周辺の尾北窯、知多半島の知多窯(常滑窯)、渥美半島の渥美窯、岐阜県各務原市周辺の美濃須衛窯、同県多治見市周辺の東濃窯(美濃窯)のほか、静岡県東部地域(湖西窯など)でも生産されるようになったとされています。
当初は薄手の茶碗でしたが、粗雑化してくると土は荒々しく石英の粒が吹き出しています。一説には、窯で焼いた壷や瓶等に被せておく為に作られた蓋であったという説があります。
*下記の作品は粗雑化した例としての参考作品です。
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山茶碗は、一般的に平安時代の末ごろから鎌倉時代全般ごろまでの間にかけて、瀬戸をはじめその近郊の常滑や猿投の製陶地で焼かれた簡単な形状の皿や浅い碗を呼びます。極めてシンプルで無駄なく形作られ、粗暴とも見えるこの焼き物の中には力強い存在感がある作品が稀に存在します。反面雅味深い静かな美しさが備わるものが最上とされます。昔はそれほど人気がなかった様ですが近頃では良品を見つけるのはなかなか難しくなったようです。
*下記の写真は出土状況の作品です。
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*本茶碗は出土時に破損していたものを補修したのではないかと推測しています。
山茶碗は、本来は無釉の状態で焼かれたものでしたで、20個から30個の器を積み重ねて焼いたようですが、不思議な事はそれを焼いた窯跡からは,破片だけでなく完器のままで多く出土します。上記写真右のように重ねたそのままで焼き付いてしまって発掘されるものもあります。
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須恵器窯の高温状態で焼かれた為に、器のまわりには燃料に使った松木の灰が窯の中に舞って降りかかっています。その木灰は高温の為に溶け、降りかかった器の土に含まれている鉄分と化学反応を生じ、偶然にガラス質の釉薬となります。その“自然の釉”は、灰緑色や時にブルーの色となり器に美しい景色をもたらします。器肌の色は灰白色のものが多く、いくぶん褐色を帯びた灰黄色をしているものもあり須恵器系窯で焼かれた事は間違いありません。中には瀬戸の様に穴窯でやかれたと見えるものもある様です。
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胎土には石英や長石などの小砂粒が混じっていて、古い時代のものほど雅な味わいが深く、端正で均衡のとれた形をしています。
*下記の写真は上出来となる参考作品です。
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作りも薄くかなり堅く焼き締まっていて、古い時代のもの程自然釉も多くかかっていますが、時代が下がってくるにつれて作も粗雑になり、素地も粗く自然釉はあまりかからなくなる傾向にあります。
山茶碗の特徴は基本的に釉を施さず、粗い粒子の胎土を持つ灰色ないし黄灰色の陶器ですが、淡緑色の自然釉がかかるものもあります。器種は碗・小皿・鉢・壺などの作品がありますが、碗と小皿が特に多いようです。碗や小皿は、やや内湾して立ち上がる胴部をもち、下に高台(付け高台が多いようです。)が付いています。焼成時に製品を重ね焼きしますが、その際、下の製品に高台が癒着しないよう籾殻を敷いたため、高台縁に籾殻の圧痕が残る製品があるようです。
山茶碗は12世紀から15世紀までのおよそ400年にわたり生産され、当初は灰釉陶器の形態を引き継いでいましたが、時代が下るにつれて碗の胴部の立ち上がりが直線的になり、小皿は扁平化し、多くの器種で高台が省略されるなど簡略化していく傾向が見られます。
製品の流通圏は、ほとんど地元の東海地方であるため、庶民向けの日常雑器として使われたと考えられますが、内面が摩滅したものや、「卸目」を持つものが一部にみられることから、食膳具としてだけでなく調理器具(捏鉢など)的機能をも持っていたとする意見もあるようです。
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この造形美は茶人には好まれるものでしょうが、家内はどうも土臭いという・・・・・。決して実際には匂わないのですが・・・。
茶事の茶碗として用いることのできる山茶碗はかなり少ない、というか稀有のもののようです。見込みは茶筅が痛まないように滑らかなこと、自然釉のかかり具合など景色が優れていること、形に趣のあること、高台がキチンとしていて持ちやすいことという茶碗としての必須条件のすべてをクリアする作品はまずない・・・。本作品はこれらの条件をすべて兼ね備えています。高台は付け高台かな・・??
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粗雑な造りの一般的な山茶碗は下記のようなものでしょう。
山茶碗 その2一部補修跡有 誂箱口径132~135*底径50~60*高47
前述のように山茶碗は12世紀から15世紀までのおよそ400年にわたり生産され、当初は灰釉陶器の形態を引き継いでいましたが、「時代が下るにつれて碗の胴部の立ち上がりが直線的になり、小皿は扁平化し、多くの器種で高台が省略されるなど簡略化していく傾向」が見られます。本作品のこの説明のように時代の下がったものと推察されます。
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高台脇の自然釉が緑色になっており、高台は明らかな付け高台になっています。
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時代の下がった山茶碗は基本的には茶事の茶碗には向いていないようですね。
*なお最初に紹介した山茶碗は茶事の茶碗としてもよく、本ブログで好評であった作品です。