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寺崎廣業と平福穂庵 梅月想思図 その2 寺崎廣業筆

本日紹介する作品は「梅月想思図 (その1)」(下写真右)と題した共箱を有した作品と同じ構図の作品です。ふたつの作品で大きく違うのは月の有無ですね。
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寺崎廣業に限らず、同じ構図の作品を遺している画家は数多くいますが、本画を完成する過程で幾つかの作品を描く場合と本画を完成後に依頼されて同じ構図の作品を描く場合があるようです。ただし、模写している作品もあるので油断はなりませんね。
寺崎廣業と平福穂庵 梅月想思図 その2 寺崎廣業筆 大正4年(1915年)頃水墨着色絹本軸装 軸先象牙 二重箱共箱 全体サイズ:横547*縦2030 画サイズ:横414*縦1200
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落款に大きな違いはなく作品のどちらが先に描かれたかは不明です。真作ならおそらく同時期に描かれた作品と推定しています。
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「梅月想思図 その2」のほうが描き方がちょっと雑かな?
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どちらの作品も落款の書体から明治末から大正期にかけての作と推定されます。
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寺崎廣業の(唐)美人図の真贋の判断には「下のつま先が見えているものが真作」という説がありますが、どうも当方の推察では根拠のない説だと思っています。
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「梅月想思図 その2」の落款と印章は下写真左で「梅月想思図 その1」の落款と印章は下写真右です。
印章の「業」の字の印影に違いがあるようにも思えますが、「梅月想思図 その1」の印章は他の作品や参考資料と一致します。「梅月想思図 その2」の印影は疑っていいでしょうが、現時点では真作と判断しています。
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本ブログで以前に紹介している「梅月想思図 その1」の作品は下記の写真のとおりです。
梅月想思図 その1 寺崎廣業筆水墨着色絹本軸装 軸先象牙 二重箱共箱 全体サイズ:横558*縦2030 画サイズ:横420*縦1210
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寺崎廣業の美人画は評価が高く、特に綿密に描かれた作品は他の作品に比してずば抜けて高くなっています。本作品はそこまで綿密には描かれていない作品ですので、そこまでは高額ではないと思われます。
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「梅月想思図 その1」には月が描かれていますが、逆に橋の欄干は描かれていません。
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ふたつの作品を並べて展示して鑑賞しています。近々、整理のために寺崎廣業の描いた唐美人図をすべて展示して愉しもうかと考えています。
本日紹介した作品は「締直し天地新調 染み抜き(洗い程度)」の処置を施しています。(下記写真右)
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梅月想思図 その2 寺崎廣業筆 大正4年(1915年)頃水墨着色絹本軸装 軸先象牙 二重箱共箱 改装後の寸法 全体サイズ:横538*縦2010 画サイズ:横411*縦11952024年1月18日締直し天地新調 染み抜き(洗い程度) 35,000円
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「締め直し」というのは、もとの表具材を使用して改装することです。染み抜きして元の表具材がよいものであれば、この方法がおすすめですね。
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保管状態がよいものであれば、当時のまま遺すのがいいのでしょうが、どうしても経年のよる劣化やシミの発生があるのが、掛け軸の作品にはつきものです。
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良い状態を維持するには、メンテの判断が必要になってくるのはやむを得ないのでしょう。
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当方で依頼している表具師さんのお値段はかなり良心的な価格と思われます。
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腕の良い、良心的な価格の表具師を見つけることがいい作品を遺すことに繋がるのでしょうね。それでもかなり贅沢な趣向には相違ない・・。
ところで同じく郷里出身の画家の平福穂庵にも同題の作品があり、当方で所蔵しています。(未投稿の作品ですので、後日詳細は説明します。)
梅月想思図(羅浮仙) 平福穂庵筆 明治21年(1888年)紙本水墨着色軸装 軸先象牙 鳥谷幡山鑑定箱(昭和12年)全体サイズ:横663*縦2170 画サイズ:横517*縦1285*分類第4期:さらなる飛躍の時(明治18年~23年)
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明治24年の作とされますが、この頃には寺崎廣業も画家としてスタートしており、平福穂庵と会っています。
寺崎廣業は1888年(明治21年)春、23歳の時に上京すると平福穂庵、ついで菅原白龍の門をたたいています。寺崎廣業はその4か月後にはまた放浪の旅に出ますが、「平福穂庵」から頂いた三つの印形を懐中にしていたそうです。
足尾銅山に赴いて阿仁鉱山で知りあった守田兵蔵と再会し、紹介されて日光大野屋旅館に寄寓し寺崎廣業はまもなく美人画で名を挙げます。
さらに1年半で帰郷し、「平福穂庵」の世話で東陽堂の「絵画叢誌」で挿絵の仕事をし、ここで諸派名画を模写し広業の総合的画法の基礎を築いたとされます。つまりこの時期の寺崎廣業は平福穂庵と大きく関わっているのです。この頃にこの作品を寺崎廣業が見ていた可能性もありますね。この点はどの資料にも掲載されていません。同じような構図の寺崎廣業の作品を当方でも数点所蔵していますが、互いの郷土出身の画家の関りを調べたり、その関係を推測するのも骨董蒐集の面白みのようです。






















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