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贋作考 黄瀬戸茶碗(向付)

桃山期の黄瀬戸は非常に珍重されるがゆえに、その再現に何人もチャレンジしましたが、ほとんどが失敗したようです。近年では加藤唐九郎が成功して以降、幾人かの陶工がその再現に成功しています。

本日紹介する作品は、その再現にチャレンジした当時のものと推察されます。これを「桃山期の黄瀬戸」として売ると贋作になります。

黄瀬戸茶碗(向付)
箱入
口径115*高さ75

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「ぐいのみ手」の属すると思われますが、全体に汚い印象と貫入が顕著な点は珍重される桃山期とは異なる作と推察されます。

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黄瀬戸の起源は、志野、織部、瀬戸黒とともに、桃山時代、盛んに美濃一帯で作られた焼きものです。

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黄瀬戸の釉色は、釉薬に含有するわずかな鉄分が酸化焔焼成のために出た色ですが、渋いくすんだ黄色に言い難い親しみがあります

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よく焼けて釉薬が透明になり、ピカピカと光る黄瀬戸を俗に「ぐいのみ手」と呼び、しっとりとして滋味がありじわじわとした肌をしているのを、「油揚手」と呼んでいます。

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一般には薄い作りで、彫りと鉄絵、胆礬の緑彩で表し鉄彩と緑彩を点じています。

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高台は低く薄い作りで、高台内に置き台の跡が茶褐色に焦げて輪形に残っているのが特徴です。

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通常は向付のような食器を茶碗に見立てたものが多く、稀に当初から茶碗として作られてものがあります。

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桃山期と証する贋作も多く、桃山期の作品は砂地に油を流したようなしっとりとした照りがあり、ざらつきはないものです。

胆礬(たんぱん)釉も桃山期の作品はほのかに染み込んでいて絵具で描いたようにべたついているものではありません。本物には高台まですべて釉薬がかけてありますが、贋作の多くは胎土が露出しています。

本作品は、薄作りの向こう付けとして作られ、底まで釉薬が掛けられ、置き台の跡がきちんと残ってます。問題は胆礬(たんぱん)釉と釉薬全体ですが、品格に欠けるのです。

さて、代表的な桃山期の黄瀬戸を観てみましょう。

参考作品
黄瀬戸梅花文銅鑼鉢 美濃
( きせとばいかもんどらばち)
桃山時代(16世紀後期) 高さ45*口径164*高台径93

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参考作品
黄瀬戸胴紐茶碗
桃山時代・16-17世紀 三井記念美術館

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参考作品
黄瀬戸平茶碗 銘 柳かげ
桃山時代 五島美術館蔵

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本物は胆礬(たんぱん)釉や黄色の釉薬がしっとりしています。形も優雅ですね。さすがにこれほどの作品は再現できず、近代になってようやく加藤唐九朗が復活させました。桃山期のような製作は焼成としてもかなり難しいようです。

単品でみていると実感できませんが、見比べるとどうしても桃山期の品格には見劣りします。

いくつか本ブログでも黄瀬戸の作品は紹介しています。

本ブログの紹介作品

黄瀬戸 彫草葉紋皿
合箱
最大幅240*高台径110*高さ47



黄瀬戸茶碗
仕覆付合箱
口径100*高さ76

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「彫草葉紋皿」はかなりいい線にいっています。本作品や「黄瀬戸茶碗」も悪意の贋作と片付けるのは簡単ですが、愉しむ分にはいたっていい作品です。なにしろ本物の黄瀬戸の作品などは高嶺の花もいいところで、アルプスのてっぺんみないなものです。


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