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壺屋焼 白化粧地呉須海老文大皿 金城次郎作 その5

昨年末はなにかと気忙しい日々・・。そんな状況でクリスマスイブ。

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同時に息子の三歳の誕生日を迎えました。

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三年はあっという間でした・・。

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本日は本ブログでたびたび紹介されている浜田庄司と縁の深かった金城次郎の作品の紹介です。金城次郎の作品については銘の有無、共箱の有無が話題になります。

壺屋焼 白化粧地呉須海老文大皿 金城次郎作 その5(整理番号)
口径408*高台径*高さ82

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金城次郎は無銘の頃(作品に銘を入れていない頃)に数多くの口径40センチクラスを超える大きな皿を製作しています。

各作品の説明でも記述しているとおり、金城次郎の作品は白泥を化粧がけし、そこを釘で彫って文様を描き、茶色や青を塗っています。一気に魚と海老を描いており、その躍動感が醍醐味となっています。沖縄の釉薬は流れやすいため、釘で線を彫って釉薬で埋めましたが、それが意外な効果を生み金城次郎独特の作風となっています。

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金城次郎の技法

金城次郎は鉄分の多い赤土で成形したうえに白化粧と魚や海老が描いてある作品が広く知られます。これは化粧土にイッチンで描くか、逆に工具でかき落として線彫りしています。

琉球陶器といえば金城氏の魚紋と海老紋を思い浮かべる人もいることでしょう。この模様と装飾が特徴的な技法です。その他、指描きでの装飾や釉薬の流し掛けなど、益子や小鹿田にみられる技法も自らの作風にマッチさせています。

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次に釉調についてです。氏の作品は線彫りの深めのみぞが釉薬の濃淡を生み出しています。これはイッチンでも同様で、器面の凹凸で呉須の青や、真鍮(しんちゅう)の緑釉の色が微細な濃淡をみせています。

青が濃すぎないのは黒釉を混ぜているためです。この黒釉は黄土と灰を混ぜたもので飴釉にも蕎麦釉にもなります。日用品を旨とする壺屋ではよく使われる釉薬といえます。また、透明釉にはモミの灰に珪石、石灰質の補填ではサンゴを用いています。これらの原料は全て沖縄で手に入るものです。沖縄独特の釉薬言えるでしょう。

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透明釉はさておき氏の作品を見ると釉が流れているのがよく分かります。線彫りとイッチンの凹凸がないとさらに流れてしまうので、この装飾が釉薬をせき止めているわけです。こうして金城次郎は独自の世界観を構築していきました。

氏が陶業に関わり60年が経った1985年、国の無形文化財「琉球陶器」保持者に認定されます。17歳年上の濱田氏は「笑った魚や海老を描ける名人は次郎以外にいない」と評したそうです。戦後の琉球陶器において「魚」と「海老」は一般的なモチーフでした。それにもかかわらず、魚紋と海老紋は金城次郎の代名詞といえるほどの独自性と躍動感に満ちています。

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本作品は壷屋時代の無銘の頃の作品とは断定できず、壷屋時代の最後の頃か読谷に移転してからの最盛期の作品ではないかと推察されます。1980年以前には銘を入れてなかったのでその頃の作品、もしくは銘を入れ始めた頃になんらかの理由で銘を入れなったのかもしれません。贋作の可能性は否定できませんが、これほどの作品を作る人がいるかどうかは不明です。数多くの類似の作品が出てきており、これらの検証は後学とせざるえないのが現状です。

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1978年(昭和53)に高血圧で倒れ、その後はリハビジに励みながら作陶をしています。後期の作品に見るべき作品が少ないのはこの病気が影響しているかもしれません。

贋作が存在するが故に銘や共箱がないと金城次郎の作品と一般には認められませんが、逆に銘や共箱のある作品は勢いのうせた作品になっています。なお1997年(平成9) 思うような作品ができなったということで、高齢を理由に引退しており、晩年の20年間で膨大な作品を製作しております。

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前述のようにインターネット上の記事には1980年までは銘を入れていないという記述があります。40センチを超える大皿の製作には体力を使いますので、高血圧で倒れた後にはこのような大きな作品の製作は無理があったのかもしれません。

市場に流通している金城次郎の作品は銘や共箱のある作品がほどんどですが、それらは逆に見るべき作品が少ないといわぜる得ない状況です。

*なお金城次郎は箱書きなど不要と考えていたのか、箱書きの文字が統一されておらず、箱書や銘は他人に任せていた可能性があります。

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金城次郎の作品を見る上では、作品そのものを見る眼が大切ですが、これがなかなかどうして素人では難しいものです。難しいがゆえにその果てに真実があるように思いますが・・・。

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骨董も含めてモノづくりのすべては疑心暗鬼のような過程を経て辿り着くものかもしれません。

いずれにしても銘や共箱のある作品が主流となっている金城次郎の作品より、もっと以前の銘などない作品に真骨頂があるように思われます。

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贋作の罪というか、銘や共箱、鑑定が優先し、本来評価されるべき作品がなおざりにされているきらいがあります。

さらに言うなら名声や金銭的な俗世間的なものを先んじるがゆえにモノづくりには後継者が育たなくなったとも言えます。まずはホンモノを見る眼を養うことです。それがものづくりの原点ですね。

*ちなみに筑紫哲也氏は金城次郎の著名なコレクター。

*金城次郎は高台部に傷がついたもの、あるいは焼成中にゆがみが生じたものも、注文主に渡したり、一般に販売したりしていています。

下記の作品は本ブログでも紹介されている作品です。

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琉球王府時代に窯業関係を所管した行政組織。瓦奉行所には多くの職人たちの中に「洩壺修補細工」という職人が配属されており、焼成で生じた傷・ひびを補修して市場に出すことは一般的であったそうです。

下記の作品は本ブログでも紹介されている作品ですが、厳密に寸法を測ると歪んでいるのが解ります。

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近代期でも壺屋の製品は、通常は東町の焼物市場で売買されますが、歪みや傷が生じた製品は別の専門の市場で売買されています。金城次郎にとって、焼成による失敗品を売買することに抵抗感はなかったようで、むしろ窯の中で生じる変化に、積極的意義を見出そうとしているかのように思われます。

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下記のブログで紹介した作品ですが、浜田庄司が評した金城次郎の作品には魚が笑うような独特の表現があります。

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あらためて金城次郎の作品を休日にじっくりと観察いたしました。

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息子は家内と初釜に出かけて行き、ひさかたぶりにのんびりとした休日を過ごせました。

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