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古信楽壺花入 その2

「日本人は信楽と李朝で死ねる。」という言葉が骨董マニアの間にあるそうです。これは死ねるほど日本人の骨董マニアは信楽と李朝を愛するということの例えのようですが、むろん当方には信楽と李朝にそれほどの執着心は備わっていませんので、李朝と信楽の蒐集はメインではありません。

ただ陶磁器ファンはいろんな分野に興味が分かれていますが、伊万里や鍋島のような華麗で精密な磁器の世界より、陶器の世界が日本人の感覚にはあっているのは事実でしょう。信楽、備前、李朝が最終的に陶磁器ファンが行き付く分野だろうとたしかに小生も思います。

*ちなみに「磁器」と「陶器」の製造的な根本的違いを知らない御仁が意外に多いようですImage may be NSFW.
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本日紹介するのは、本ブログでは数少ない信楽の作品です。

古信楽壺花入 その2
杉古箱入
口径104*胴径215*底径*高さ268

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信楽焼きの始まりは諸説ありますが8世紀頃の須恵器と同じ古さを持つとも、また平安後期に常滑の陶工が来て始まったともされていますが、決定的なところはまだわかっていないようです。

ただ鎌倉時代後期ころから特徴あるすぐれた作品が多く見られることから、このころから本格的に焼かれ始めたのではと考えられているそうです。瀬戸・備前と並び日本六古窯のひとつです。

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山の斜面を利用した穴窯で作られた信楽焼は、主に壺や甕などの日用雑器です。これらはひも状にした土を巻き上げて作るため、形はいびつですが荒い土肌は通気性に優れ、種や茶葉の保存に適していました。

一言で「古信楽」と言っても、古信楽の特徴は主に下記の事項が挙げられるそうです。

1.長石が全面に出ている。

これは信楽のもっとも代表的な鑑定ポイントです。つぶつぶの大きな白い長石 が肌から全面に吹き出ているように出ています。この特徴を備えた壷ならかなりの確率で信楽ですし、花入れ、水差しなどの茶道具でしたら伊賀を思い浮かべるべきのようです。

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2.ウニ(石ハゼ)

信楽の土は荒めの風化花崗岩で、この粘土の中に風化しきってない木の節が混ざっているものがあります。これを木節粘土(きぶしねんど)といいます。この節が粘土の中に入りますと、燃焼したときに高温で燃えてしまいます。するとその節があったところは空洞になります。このことによって保存に適した器になるようです。

これを語源はわかりませんが「ウニ」と いいます。大きな「ウニ」になりますと中から外へと穴が抜けてしまっているものがあります。 壷ですと穴があいていては、役に立たないので破棄されてきました。多くの信楽のやきものにはこのウニが表面や裏側に見ることができます。この木節粘土が高温で焼かれた跡は、マニアの間で「ビスケット肌」とも称して愛玩されます。あたかも割れたビスケットの肌を見たような感じになります。

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3.美しいビードロ釉と火色

信楽の大きな魅力の一つに、美しく薄いグリーン色のビードロ釉があります。 独特の白い木節粘土に薄い透明感の強い独特の釉薬が流れ、胎土とのコントラストはとても美しい魅力があります。これは古信楽の鑑賞のポイントで、ビードロ釉が薄れていたり、発生が少なかったりするとたとえ室町期の作品でも評価が格段に落ちます。

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また胎土そのものの最大の魅力は変化に富んだ肌合いにあるといえ、鉄分の少ない白い土は焼き上げると火色と呼ばれる赤褐色に変わります。

*火があたる正面と裏面では信楽の表情が一変しますが、それが魅力となります。

4.「檜垣文」

古信楽の特徴は「檜垣文」です。これはすべての作品に入るわけではありませんが、室町の信楽作品に数多く入った物をみます。多くは二重線の間に×印が連続した文様です。通常は肩に近いところに入りますが、少し古いものでは壷の腰からやや下のあたりに檜垣文が入る場合があります。この檜垣文は陰陽道などによる魔よけの×印とも考えられています。

*残念ながら本作品には「桧垣文」はありません。「桧垣文」があるのとないのでは大きく評価が違いますが評価の決定打ではありません。

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補足:「桧垣文」は信楽焼きの特徴の一つですが、14~15世紀前半の作品に集中して付けられている文様で、小壷には必ずと言って良い程付けられています。檜垣文は前述のように室町時代の作に多くみられますが、その後は次第になくなっていった文様です。ただ現代作品にはよく見られる装飾ともなり、信楽の1つの特徴的な文様といえるでしょう。

檜(ひのき)で作った垣根の形にちなんで「桧垣文」と呼ばれます。なお、檜は香りもよく高級木材として知られます。また檜を神聖視する習慣もありますし、垣根は居住空間を外敵から守るものです。よって檜垣文は当時の人々の神聖なお守りであり、無病息災や魔除け、安全・豊作祈願の思いが込められていたのかもしれません。

下記の室町期の参考作品(松永コレクション)には「桧垣文」と珍しい「窯印」があります。

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5.造形

信楽の作品の大きな魅力に形の力強さがあります。横から見ますと胴が幾つかに分けて継がれながら出来ている痕跡を見る事ができます。胴が側面で段をなしているように継ぎ目の角度が違っている造形は遠くから見ると非常に力強い形を楽しませてくれます。

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6.口造り

口造りも大きく外に反った形から、口頚部が直立し口縁部が外に反る形となり、室町時代末期になると、玉縁状(丸くなっている)の口造りになります。小壷などには、二重口のものもあります。

小壷の「蹲る」などは基本的に荒縄で縛って軒にぶら下げるので、口から縄が抜けないようにがっちりしているものが真作で、縄が抜けそうなものは贋作と判断するポイントになります。

*本作品は大ぶりな作品ですので、軒にぶら下げるような用途ではないと思われます。

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7.「下駄印」

「下駄印」は底面に残った「ニ」の凹みで、下駄の歯の様な形からこう呼ばれています。これは回転代に付けられた二本(又は一本)の凸状の棒の痕で、粘土が回転台に密着させる為の物です。室町後期から桃山時代の作品に多く、信楽独特の物としていましたが近年類似の物が、古丹波や古備前焼などでも、確認されています。

補足:凹んだものを「入り下駄」、凸のものを「出下駄」といいます。これは作品をロクロ引きするさいに、中心がずれないよう固定した跡といわれます。こうするとロクロからの離れもよく、焼成しても底に隙間ができるのでくっつきにくくなります。

下駄印というのはろくろの上に土を置いたときにホゾの穴の中に土がめり込んで、くっきりしているものでわざとらしい弱弱しいものは贋作と判断されますということが、ときとして真贋のポイントになります。

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8.「窯印」

「窯印」のある古信楽はは非常に珍しく、一般的には窯印は壷の肩には見当たらないとも言われています。

備前のように他の窯場で見られる、壷の肩に箆などで彫る印などの「窯印」が描かれている場合は少なくなっています。ただ「信楽には窯印は比較的少ない」と言われますが、「あるものもある」ので一概に窯印があるから贋作と判断するのは早計です。

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9.「ユミ痕」

「ユミ痕」とは、成形した作品を回転台から降ろす場合に使う道具です。藤蔓(ふじつる)を曲げて底を挟む様に巻きつけ、取り上げますが、その際「ユミ痕」が付きます。ほとんどの壷や甕の底にその痕が付いています。

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このような信楽の特徴をまとめて記載している資料は意外にすくないものです。信楽には茶道の「侘び・寂び」の雰囲気があります。飛び出ている長石、木節によって穴のあいた地肌、ビスケット肌。淡いグリーンの自然釉。その素朴でいて力強い造形を持つ信楽は、これからも日本人を魅了して止まないやきものでしょう。

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本作品「その2」は古い箱に収められている作品です。

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さて、本作品の真贋については読者の皆様にお任せしますが、長石による表面のブツブツ、景色となっているビードロ釉、胴が段をなす力強い造形、底の「出下駄印」、そして肩にある珍しい窯印らしきもの、以上から当方では室町期の古信楽の作と期待しています。

投稿についでに同じくらいの大きさの壺(中くらいの大きさ)を屋根裏に整理してあるので比較してみました。下記の写真の左が以前に本ブログにて紹介した「古信楽壺花入 その1」の作品です。

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底には明確な「下駄印」は見当たらず、あるような、ないようなという感じです。「ユミ跡」はあるようです。

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「その1」にはその他の特徴は備わっていますが、ただ「窯印」や「桧垣文」はありません。

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「古信楽壺花入 その1」は入手経緯からはしっかりとした古信楽の壷と断定できますが、時代は不詳です。「古信楽壺花入 その1」は古信楽焼でも上出来の部類に入る出来だと当方では判断しています。

*桧垣文、下駄印、窯印あるとかないとかの定石よりも、全体の趣が重要だと思います。

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上記のような約束事の有無では真贋は判断できないのが骨董の常です。あくまでも鑑賞に耐え得る作品か否かが究極のポイントですね。

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「古信楽壺花入 その1」の作品はいくら見ていても飽きない作行です。

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杉の箱に収められていますが、当時、蒐集された方が誂えています。

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ついでに備前も引っ張りっ出してきました。

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備前は端正な姿をしており、明らかに信楽とは見どころが違いますね。詳細はいずれ・・・。

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当方の手頃大きさの壺達、たいした作品ではありませんが、子供の頃に訪問先などの玄関先によく並んでいた壺たちを思い出せます。あまり並べすぎると嫌味になるのも壺の共通事項のようですが・・。


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