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加賀千代女 中村左洲筆 昭和20年頃

左洲といえば鯛の専門画家のようにいわれることがあります。それは、左洲が漁師でもあったこと、魚類は円山四条派の重要な写生対象であったこと、鯛の絵は吉祥画として多くの需要があったことなどが主な理由でしょう。確かに、鯛を描いた作品には終生伊勢の海に親しみ、伊勢志摩の自然と一体化したかのような彼の特質を見ることができます。一方、情趣こまやかな人物画の作品には画家中村左洲の技量がより強く現れているように思われます。とくに美人画では根強いファンがいることはあまり知られていません。

加賀千代女 中村左洲筆 昭和20年頃
絹本水墨着色軸装 軸先 合箱 
全体サイズ:縦2060*横650 画サイズ:縦1150*横510

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描かれているの「加賀千代女」です。

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加賀千代女(かが の ちよじょ、1703年(元禄16年)~ 1775年10月2日(安永4年9月8日))は、俳人。号は草風、法名は素園。千代、千代尼などとも呼ばれる。朝顔を多く歌っていることから、出身地の松任市(現白山市)では、市民への推奨花の一つに朝顔を選んでいる。 白山市中町の聖興寺に、遺品などを納めた遺芳館がある。加賀国松任(今の白山市)で、表具師福増屋六兵衛の娘として生まれた。幼い頃から一般の庶民にもかかわらず、この頃から俳諧をたしなんでいたという。12歳の頃岸弥左衛門の弟子となる。17歳の頃、諸国行脚をしていた人に各務支考(かがみしこう)が諸国行脚してちょうどここに来ているというのを聞き、各務支考がいる宿で弟子にさせてくださいと頼むと、「さらば一句せよ」と、ホトト
ギスを題にした俳句を詠む様求められる。千代女は俳句を夜通し言い続け、「ほととぎす郭公(ほととぎす)とて明にけり」という句で遂に各務支考に才能を認められる。その事から名を一気に全国に広めることになった。1720年(享保5年)18歳のとき、神奈川大衆免大組足軽福岡弥八に嫁ぐ。このとき、「しぶかろかしらねど柿の初ちぎり」という句を残す。20歳の時夫に死別し松任の実家に帰った。30の時京都で中川乙由にあう。画を五十嵐浚明に学んだ。52歳には剃髪し、素園と号した。72歳の時蕪村の玉藻集の序文を書く。1775年(安永4年)73歳で没。辞世の句は、「月も見て我はこの世をかしく哉」。1,700余の句を残したといわれている。

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朝顔を多く歌っていることからか、井戸脇で朝顔と一緒に描かれる構図の作品が多くの画家によって描かれています。

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加賀千代女の「あさがおに つるべとられて もらひ<い>みず」という句を念頭に置いて描かれているのでしょう。

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*遠目にはわからないですが、胡粉で描かれている着物の文様がなんとも綺麗です。美術館のようにガラス越しの鑑賞ではよくわからないものです。できるなら日本画は決してガラス越しで観るものではありません。

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手足のしぐさとふくよかさと着物の文様・・・、なんともいろっぽいね~。

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釣瓶(つるべ)とられて=「釣瓶」は縄や竿をつけて井戸の水を汲み上げる桶。釣瓶をとられたというのは、朝顔を擬人化している表現ですね。はむげに朝顔を取り払って釣瓶を使うにしのびず、その気持ちが「もらい水」という下句になっているでしょう。

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さらに分かるように説明すると、句は「朝早く、起き出してみると、井戸の釣瓶に朝顔がからみついて咲いており、それをはずして水を汲むには忍びず、そのままにして近所からもらい水をした。」という意味です。この句は「朝顔」に主題性があるように思われますが、実は主眼は「もらい水」の方に置かれているようです。

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このような句が背景にあることを知らないとこの美人画は「色気があるかないかなどと鑑賞する羽目」になります。

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日本画を鑑賞する方はそのような素養がないと鑑賞する資格がないとも言えますね。

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印章は「寸家□読?」の朱文白方印ですが、初めて見る印章で意味は不明です。落款の字体からは晩年の作と推定されます。軸先は美人画によくある塗りの軸先が使われています。

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加賀千代女を描いた作品は数多くありますが、通常はもっとスマートな女性が多いと思っています。中村左洲の本作品はふくよかに描いていますね。

当方の作品で「千代女」を描いた作品は、古くからある下記の作品を所蔵しています。(2011年3月27日投稿)

千代女 小早川清筆
紙本着色絹装箱入

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小早川清は郷里に逗留したことがあるらしく、母の実家には襖絵が遺っています。

千代女は前述のように実在した人物で、画像は小さいのですが下記の像があります。

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ふくよかに艶っぽく描かれている作品ですが、このことが中村左洲の美人画の人気の由縁かもしれませんね。

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「鯛」を描くことで著名な三重の画家「中村左洲」ですが、実は美人画でも人気があることは意外に知られていません。この画家の描写力は抜きんでたものがありますので、今後注目されてよい画家のひとりでしょう。

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