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Channel: 夜噺骨董談義
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氏素性不明作品 宋胡禄? 鉄釉菊花紋陽刻合子 その2

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宋胡禄鉄釉菊花紋陽刻合子
合箱
最大胴径970*高台径40*高さ58



本作品の製作年代は不詳です。17世紀の作と説明がありましたが、非常に微妙な表現です。17世紀には宋胡禄の窯は途絶え、20世紀後半から製作が再開されていますので、近代作の可能性もあります。




本来の鉄絵ではなく陽刻の菊花紋に鉄釉が掛けられた作品です。高台脇の貝殻は焼成時のものでしょう。鉄絵でなく陽刻なところがかえって魅力的です。



海に沈んでいた作品のように推察されます。



あちこちに珊瑚や貝の跡が見られます。



実に見事な菊紋様の作品です。



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宋胡禄/宋胡録/寸古録:(すんころく)タイのスコータイ県、サワンカローク周辺で作られる陶器に対して言われる。「宋胡禄」の語自体は産地である「サワンカローク」の音訳である。元々は、素焼きの器に、梨地の白化粧をし鉄絵で多少の飾り絵を描いたものを言ったが、後に意味は拡大されタイで産出される焼き物すべてを指すようになった。歴史は、13世紀頃にラームカムヘーン大王が中国から陶工を呼び寄せ生産に成功した。14世紀〜15世紀頃には輸出ように頻繁に作られ、中国人の商人によって日本へ持ち込まれた。日本では茶器としてつかわれ、茶道が普及し始めた戦国時代から注目を集めて、江戸時代には茶人に広くもてはやされた。秀吉以前より南蛮貿易によって日本にも輸入されていました。

宋胡録の魅力は何といってもその鉄絵(鉄分を多く含んだ顔料で下絵をかき、その上に釉をかけて焼きます)の面白さにあるといっていいでしょう。極く微妙な条件の違いによっても多様に変化するこの炎の芸術は、まさに宋胡録ならではのものです。しかし、13世紀から16世紀にかけて繁栄した宋胡録の産業はその後衰亡の道をたどり、タイ国の北部の農村地帯などに分散して僅かに残りましたが、なぜかそこには宋胡録の命ともいわれた鉄絵が消滅していました。理由は解りませんが恐らくはこの鉄絵の難しさにあったのではないかと思います。中国やベトナムの陶器の影響を少なからず受けたと思われる宋胡録がなぜ、呉須(青色顔料)を使わずに鉄絵になったのかといえば、それはタイ国に呉須が産出しなかったというだけのことのようです。これがかえって宋胡録を世界的に有名にする原因になったのでしょう。



宋胡録の釉は2種類の樹木の灰にディンナアナーと呼ばれる田んぼ上積み泥土を調合して作りますが、何しろ全くの自然物ですからその時、その場所によっていろいろと成分の違いが出てくるし、灰にする木の樹皮に附着した土などの異物によっても釉の成分は違ってくるのです。ですから宋胡録の鉄絵というものは呉須絵のように安定せず、ほんの少しの成分の違いや温度あるいはその炎の状態によって色調が変わり、時には絵を崩したり流したりしてしまいます。恐らく昔の陶工たちは、新しく釉を調合した時試験焼きをして、絵がきれいに出ない場合はその陶器を失敗品として捨てたのでしょう。古美術商などの店頭で見かける絵の流れた物や、ナマ焼けのように白っぽくなっているものはこれらの失敗品の出土品です。絵を定着させない釉や、ナマ焼けで白濁したようの釉も見方によっては趣のある面白い陶芸品を作りますし、茶人の「侘び寂び」を求める心にフィットするかも知れません。事実、今、白濁した釉の陶器などを「これこそ本当の宋胡録だ」と思っている人は意外と多いようです。しかし、タイの有名な宋胡録蒐集家のコレクションにはこのような作品は無く、殆どが鉄絵の見事な芸術品で、これが宋胡録の本流です。

宋胡録の鉄絵はようやく1965年頃から復活し、現在に至っています。1997年にバンコクで開かれた宋胡録陶芸展では鉄絵の見事な作品が数多く紹介され、内外の陶芸品愛好者の目を見張らせるに至りました。そしてこれを機に、タイ国の宋胡録研究家や学者たちによって1999年6月、元タンマサート大学学長のチャーンウィット博士を会長に宋胡録陶芸保存協会が設立しました。タイ人の誇りとするタイの伝統芸術「宋胡録」が南牧村で再び世界の目を集めようとしています。


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