下記の作品を入手した際に保存箱がなったので、今回は箱を誂えています。掛け軸には保存箱のない作品が多々ありますが、近代の作品は本来保存箱がある筈なのですが、作品と箱を別々になってしまうことが多いようです。
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楓下美人図 松本楓湖筆 紙本水墨着色軸装 軸先細工骨 合箱全体サイズ:縦2015*横695 画サイズ:縦1153*横586
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この作品の詳細は本ブログで紹介されていますが、松本楓湖は画号を楓湖としていますが、この画号の由来は、郷里が霞ヶ浦に近く、その一入江が通称「カエデ湖」と呼ばれていたことに因むようですので、この作品と画号との関連はありません。
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松本楓湖は師である容斎の歴史画を継承し、それを次代へ橋渡ししたと評価される一方で、容斎の枠から大きく出なかった画家と言われていますが、楓湖が容斎の画風を墨守したのは、明治35年刊『日本美術画家列伝』の楓湖の項目によると容斎の意向が大きく、楓湖も師恩に報いようとしたと推察されています。
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当時需要が高かった容斎風を堅持する一方、展覧会出品作は容斎の図様に基づきながらも、写実を取り込んだ独自性を打ち出そうとした意欲が認めらます。また初期の宮内庁からの公的な仕事では、一峨から学んだ濃彩の作品が目立つようです。旧派の画家と見做されがちですが、保守的な日本美術協会には反対していました。
本作品は松本楓湖の意欲的な作品の下絵的な?作品のように推測されますが、本当のところは不明です。
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上述の松本楓湖の作品のように、現在少しずつ進めて、完了しつつある掛け軸らの作品整理ですが、その作業には以前に蒐集した作品の見直しもあります。入手した時点ではいいものと思っていても後日、贋作とか出来の悪いもの、凡作と判断したものは処分したりとなっています。たまにはその逆で、最初は贋作と判断した作品を見直すこともあります。
当方の蒐集した作品の多くは「我楽多」ばかりゆえ、本ブログで紹介した作品についても当然数多くの作品が見直されています。
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何らかの理由でつまらない作品と判断したものは順次処分するようにしていますが、とはいえ踏ん切りがつかない、あきらめが悪い(判断未了)といった作品があります。眼力の未熟さゆえですが、本日はそのように扱いに迷っている作品の紹介です。
リメイク 贋作考 大地小興(仮題) 伝山口蓬春筆絹本着色軸装 軸先象牙 合箱二重箱全体サイズ:縦2095*横715 画サイズ:縦1290*横500
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真贋も不明ですし、共箱もないので、「大地小興」というのは仮の題です。この題名は後述する同じような構図の作品を見かけたためです。
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洋画からスタートして大和絵を起点とした山口蓬春がこのような画風の作品を描いたというのはちょっと違和感があるように感じますが・・・。
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この鳥はなんでしょう? 斎白石にも「大地回春」という似たような作品(本ブログにて投稿済)があり、その作品を思い起こさせる雰囲気があります。
描かれているのはおそらく「八哥鳥」かな? この種の鳥は実在する鳥であり、ムクドリ科に分類される鳥の一種です。原産地は、中国大陸南部、および、インドシナ半島。台湾、ベトナム、ラオス、ミャンマーに分布しているようであり、日本では外来種となります。
全長は約26- 27cmで、ムクドリ大となります。全身の色は黒く、翼には大きな白い斑点があり、飛翔する際によく目立ち、突き出した冠羽が頭部前方を飾っているのがもうひとつの特徴的であり、翼の斑点と、頭部の飾り羽によって識別は容易とされています。嘴の色は橙色、肢は暗黄色。鳴き声は、澄んだ声でさまざまな音をだすようです。本作品に描かれている鳥と特徴がほぼ一致しますね。
中国では、人によく懐き、人語を真似るということで親しまれており、古来より花鳥図などの題材にもされていますね。また、羽毛と内臓を取り除いた八哥鳥は漢方薬として利用されるそうです。日本では八哥鳥を飼うとする習慣は、江戸時代に広まったとされます。江戸初期において古九谷の陶工は八哥鳥の図柄を磁器に焼き付け、絵師・伊藤若冲はその手になる『鹿苑寺大書院障壁画』の1枚に八哥鳥を描いているね。
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もう一つ特徴的なのは孟宗竹。
四条派のような描き方? 技法的には優れたものがある作品です。
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山口蓬春は大和絵を起点として、有職故実、古典技法を学び、さらに琳派や宋元院体画などの研究にも取り組んでおり、この様な琳派系統の技法を取り入れた画家です。
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江戸絵画の代表的な流れの一つである琳派芸術は、20世紀以降その美が再評価され、多くの近代美術家たちが関心を寄せました。山口蓬春は戦前より俵屋宗達・尾形光琳らの芸術に憧れ、積極的に研究し、「扇面流し」(1930年)、「春汀」(1937年頃)など琳派的傾向を示す作品を制作しています。
本作品は琳派の影響に見られるこの頃の作か?
モダニスト・山口蓬春が、やまと絵の伝統に新たな装飾美を見出した琳派の先達に私淑し、自らの芸術を展開してゆく過程での作か?
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セザンヌやピカソ、ボナール、マテイスなどの西洋画から新しい日本画を模索していた頃の作品・・・??
戦後、逢春はシュ-ルレアリズムに近づき、西の堂本印象に対する東京側新派のリーダーといわれました。明快な色彩で清新な自然感を構成的に表現した洋画的新傾向は、急速に戦後の日本画界を席巻していくようになります。
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晩年の昭和40年には文化勲章を受賞。昭和43年、新宮殿壁画を完成させます。大和絵や宋元画、水墨画、琳派と幅広い研究をし、日本画的な「型」から離れて、自らの創意で時代の思考、感覚、美意識に適合した新しい画境を開拓し続けた画家と評されています。
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落款からは戦前頃の作かと・・。印章は当方の資料不足から確認できていません。正直なところ、当方ではまだ判断がつきかねています。
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前述の構図が同じような作品とは下記の作品です。
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この作品は共箱に収まっていますが、この作品とて真作との保証はありません。
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この作品と本日紹介している作品は同じ印章を押印していますし、同じような書体の落款です。またこの書体の落款は他の当方の所蔵作品と一致し、戦後の落款とは書体を異にしますが、違和感はありません。
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このような作品はいつも最終的に扱いの困るものです。氏素性のはっきりしたいい作品を選ぶ方が無難なのですが・・。この作品は処分まではいたしませんが、屋根裏部屋、または男の隠れ家へ・・・。
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蒐集する者は迷える子羊のような者・・・。
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楓下美人図 松本楓湖筆 紙本水墨着色軸装 軸先細工骨 合箱全体サイズ:縦2015*横695 画サイズ:縦1153*横586
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この作品の詳細は本ブログで紹介されていますが、松本楓湖は画号を楓湖としていますが、この画号の由来は、郷里が霞ヶ浦に近く、その一入江が通称「カエデ湖」と呼ばれていたことに因むようですので、この作品と画号との関連はありません。
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松本楓湖は師である容斎の歴史画を継承し、それを次代へ橋渡ししたと評価される一方で、容斎の枠から大きく出なかった画家と言われていますが、楓湖が容斎の画風を墨守したのは、明治35年刊『日本美術画家列伝』の楓湖の項目によると容斎の意向が大きく、楓湖も師恩に報いようとしたと推察されています。
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当時需要が高かった容斎風を堅持する一方、展覧会出品作は容斎の図様に基づきながらも、写実を取り込んだ独自性を打ち出そうとした意欲が認めらます。また初期の宮内庁からの公的な仕事では、一峨から学んだ濃彩の作品が目立つようです。旧派の画家と見做されがちですが、保守的な日本美術協会には反対していました。
本作品は松本楓湖の意欲的な作品の下絵的な?作品のように推測されますが、本当のところは不明です。
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上述の松本楓湖の作品のように、現在少しずつ進めて、完了しつつある掛け軸らの作品整理ですが、その作業には以前に蒐集した作品の見直しもあります。入手した時点ではいいものと思っていても後日、贋作とか出来の悪いもの、凡作と判断したものは処分したりとなっています。たまにはその逆で、最初は贋作と判断した作品を見直すこともあります。
当方の蒐集した作品の多くは「我楽多」ばかりゆえ、本ブログで紹介した作品についても当然数多くの作品が見直されています。
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何らかの理由でつまらない作品と判断したものは順次処分するようにしていますが、とはいえ踏ん切りがつかない、あきらめが悪い(判断未了)といった作品があります。眼力の未熟さゆえですが、本日はそのように扱いに迷っている作品の紹介です。
リメイク 贋作考 大地小興(仮題) 伝山口蓬春筆絹本着色軸装 軸先象牙 合箱二重箱全体サイズ:縦2095*横715 画サイズ:縦1290*横500
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真贋も不明ですし、共箱もないので、「大地小興」というのは仮の題です。この題名は後述する同じような構図の作品を見かけたためです。
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この鳥はなんでしょう? 斎白石にも「大地回春」という似たような作品(本ブログにて投稿済)があり、その作品を思い起こさせる雰囲気があります。
描かれているのはおそらく「八哥鳥」かな? この種の鳥は実在する鳥であり、ムクドリ科に分類される鳥の一種です。原産地は、中国大陸南部、および、インドシナ半島。台湾、ベトナム、ラオス、ミャンマーに分布しているようであり、日本では外来種となります。
全長は約26- 27cmで、ムクドリ大となります。全身の色は黒く、翼には大きな白い斑点があり、飛翔する際によく目立ち、突き出した冠羽が頭部前方を飾っているのがもうひとつの特徴的であり、翼の斑点と、頭部の飾り羽によって識別は容易とされています。嘴の色は橙色、肢は暗黄色。鳴き声は、澄んだ声でさまざまな音をだすようです。本作品に描かれている鳥と特徴がほぼ一致しますね。
中国では、人によく懐き、人語を真似るということで親しまれており、古来より花鳥図などの題材にもされていますね。また、羽毛と内臓を取り除いた八哥鳥は漢方薬として利用されるそうです。日本では八哥鳥を飼うとする習慣は、江戸時代に広まったとされます。江戸初期において古九谷の陶工は八哥鳥の図柄を磁器に焼き付け、絵師・伊藤若冲はその手になる『鹿苑寺大書院障壁画』の1枚に八哥鳥を描いているね。
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四条派のような描き方? 技法的には優れたものがある作品です。
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山口蓬春は大和絵を起点として、有職故実、古典技法を学び、さらに琳派や宋元院体画などの研究にも取り組んでおり、この様な琳派系統の技法を取り入れた画家です。
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江戸絵画の代表的な流れの一つである琳派芸術は、20世紀以降その美が再評価され、多くの近代美術家たちが関心を寄せました。山口蓬春は戦前より俵屋宗達・尾形光琳らの芸術に憧れ、積極的に研究し、「扇面流し」(1930年)、「春汀」(1937年頃)など琳派的傾向を示す作品を制作しています。
本作品は琳派の影響に見られるこの頃の作か?
モダニスト・山口蓬春が、やまと絵の伝統に新たな装飾美を見出した琳派の先達に私淑し、自らの芸術を展開してゆく過程での作か?
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セザンヌやピカソ、ボナール、マテイスなどの西洋画から新しい日本画を模索していた頃の作品・・・??
戦後、逢春はシュ-ルレアリズムに近づき、西の堂本印象に対する東京側新派のリーダーといわれました。明快な色彩で清新な自然感を構成的に表現した洋画的新傾向は、急速に戦後の日本画界を席巻していくようになります。
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晩年の昭和40年には文化勲章を受賞。昭和43年、新宮殿壁画を完成させます。大和絵や宋元画、水墨画、琳派と幅広い研究をし、日本画的な「型」から離れて、自らの創意で時代の思考、感覚、美意識に適合した新しい画境を開拓し続けた画家と評されています。
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落款からは戦前頃の作かと・・。印章は当方の資料不足から確認できていません。正直なところ、当方ではまだ判断がつきかねています。
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前述の構図が同じような作品とは下記の作品です。
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この作品は共箱に収まっていますが、この作品とて真作との保証はありません。
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この作品と本日紹介している作品は同じ印章を押印していますし、同じような書体の落款です。またこの書体の落款は他の当方の所蔵作品と一致し、戦後の落款とは書体を異にしますが、違和感はありません。
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このような作品はいつも最終的に扱いの困るものです。氏素性のはっきりしたいい作品を選ぶ方が無難なのですが・・。この作品は処分まではいたしませんが、屋根裏部屋、または男の隠れ家へ・・・。
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