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杜鵑啼く頃(初音) 平福百穂筆 その126

数多い作品の平福百穂の作品中でかなり良い出来の表具の作品。掛軸は作品とともにその表具が鑑賞のポイントですが、本作品は小点の作品ながら申し分のない表具となっています。
*表具の良し悪しはなかなか写真ではうまく伝わらないかもしれませんね。
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杜鵑啼く頃(初音) 平福百穂筆 その126絹本水墨淡彩軸装 軸先象牙 島田栢樹鑑箱二重箱(舟山三朗・島田柏樹鑑定書)全体サイズ:縦1390*630 画サイズ:縦260*横240
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題材は「初音」。初音、初声ということばで、その鳴き声を待たれるのは鶯とほととぎすだけですね。ともに春と夏の到来を告げる鳥として、その初音を今か今かと昔の日本人は待ったわけなのでしょう。多くの画家がこのことを題材として描いています。
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渡り鳥であるほととぎすが渡来する5月初めはちょうど田植え時。そのため田植えを促す勧農の鳥とされています。
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ホトトギスは杜鵑(とけん)と呼び、前述のように夏の到来を告げる鳥とされます。「テッペンカケタカ」「ホンゾンカケタカ」「特許許許可局」「あちゃとてた(あちらへ飛んで行った)」などと聞こえるとされる鳴き声は、かなり忙しげで「帛(はく)を裂くが如し」と言われているようです。
実はその間にピチピチという地鳴きをはさむのですが、雌の声はこの地鳴きだけだそうです。また夜間に鳴き渡ることも多く、その場合は短くキョッ、キョッと鳴きながら飛びすぎるので、気がつかない人も多いようです。
ところでこのホトトギスには暗いイメージの面もあるようです。
「いくばくの田を作ればか時鳥しでの田長(たをさ)を朝な朝な鳴く」(藤原敏行『古今集』)という歌は、田植えの監督者である長老の田長に、田植えを早くするようにと、ほととぎすが呼びたてていくという意味ですが、「しで」はよくわからないそうです。「賎(しず)」の転訛とも、山の名とも言われているようです。「しでの田おさ」はほととぎすの異名にもなるのですが、問題はこの「しで」が同音の「死出」のほうに連想が働き、暗いイメージが定着していくことのようです。
ひとつには夜にも鳴く鳥、姿も見せずに鳴く鳥というところから、冥土に通う鳥とされていた点であり、もうひとつには「杜魂」「蜀魂」という名の由来になった中国の故事のイメージです。蜀の望帝は、退位後、復位しようとしたのですが果たせず、死してほととぎすと化し、春月の間に昼夜分かたず悲しみ鳴いたという故事です。これらのことも重なって、ほととぎすの一面でもある暗い陰鬱なイメージができていったと思われます。
鳴き声をまねると厠に血を吐くなどの凶事があるとか、床に臥して初音を聞くと、その年は病気になるとかのいろいろな不吉な言い伝えがあるようです。
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鑑定箱は門下生の島田柏樹のよるものですが、作品中の印章は非常に珍しいものです。
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島田柏樹:日本画家。東京生。平福百穂の門人。花鳥画を能くする。帝展・文展・日展入選。昭和33年(1958)歿、66才。

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島田柏樹による昭和14年に書かれた鑑定書も添付されています。
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さらには昭和40年頃の記された門下生の舟山三朗のよる鑑定書も添付されています。
*舟山三朗:日本画家。秋田県生。平福百穂に師事する。日展・文展・帝展入選。代表作に「田尻湖伝説」「道」などがある。平成3年(1991)歿、82才。
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表装、箱の誂え共々、上等なものです。筋の良い作品は筋の良い表具の誂えになっています。贋作はいくら頑張っても不思議と隙がある表具となっています。
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掛け軸を蒐集するなら作品と誂えのバランスの良いものがいいですね。
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掛け軸の収納箱に書付を同封する際には、掛け軸に巻きシワの発生しない程度にしておくという注意が必要でしょう。掛軸には巻きシワが意外に簡単に発生するものですで、巻きシワは鑑賞には大いに支障となるものです。




















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