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水墨漁村図 寺崎廣業筆 その39

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昨夜の「なんでも鑑定団」には本ブロに投稿の多い寺崎廣業の屏風の作品が出品され、真作でなんと500万でした。ちょっといくらなんでも高すぎますね。やはりなんでも鑑定団は市場の相場の10倍です。それにしても、寺崎廣業の作品が出品されたことは嬉しいことです。我が郷里が生んだ近代日本画の先駆けとなった画家の紹介はありがたいものです。

本日はもう「その39」となったその寺崎廣業の作品です。同一画家の作品が集まるといろんなことがおきるものです。箱の手直しの際に行方知らずになった寺崎廣業の作品の美人画のひとつが見つかりました。引越しで片付いた作品のひとつを掛けてみようと掛け軸をみたら、なんと箱の題名と違う美人画の作品が混入していました。

梅月想思図 寺崎廣業筆
水墨着色絹本軸装 軸先象牙 二重箱共箱 
全体サイズ:横558*縦2030 画サイズ:横420*縦1210

見つかった上記の作品はなかなかの出来だと思います。寺崎廣業はもともと美人画で名を馳せ始めた画家で、美人画は非常に人気が高く贋作も多くあり、印刷作品も数多く出回っています。

さて本日は美人画ではありませんが、寺崎廣業の作品の製作年代が記された作品です。

水墨漁村図 寺崎廣業筆 その39
絹本水墨淡彩軸装 軸先本象牙 野田九甫鑑定箱入
全体サイズ:縦2050*横535 画サイズ:縦1110*横350



賛には「大正甲寅孟秋 廣業 押印」とあり大正3年(1914年)、寺崎廣業が48歳頃の作品です。



1912年(大正元年)の文展には「瀟湘八景」を出して同名の大観の作品とならび評判作となり、1913年(大正2年)には美術学校の日本画主任となり、芸術家として斯界の最上段に立つようになった当時の作です。



箱には「先師廣業先生筆水墨漁村図」とあり、箱裏には「大正15季夏日□鑑 九甫 押印」とあり、大正15年(1926年)野田九甫が47歳の頃の鑑定です。



描き方には橋本雅邦の国画会の影響が見られます。



「雪舟に帰れ」という狩野派の影響から脱却する模索をしている時期の影響で、木々は単純化されています。



朦朧体と称する画法が生まれる前の明治期の近代日本画の創生期の作品です。



寺崎廣業は狩野派の画法からスタートしていますので、その影響がまだ見られますね。



本作品は落款や印章の照合を含めてしっかりした作品です。前の所蔵者もきちんと保存していたようです。今では箱にデジカメの写真を貼る御仁も多いらしいです。掛け軸を箱から出さずにどのような作品かを分類するにはいいでしょう。



本作品と同レベル程度の書き込みとほぼ製作時期の近いような作品には参考作品として下記の作品が上げられます。

参考作品
夏江
思文閣墨蹟資料目録「和の美」第456号 作品NO19
評価金額:65万



印章は違うものが押印されています。



寺崎廣業の作品について贋作のほかに印刷もありますので念のために記述しておきます。

郷里のお寺で所蔵品を「なんでも鑑定団」にて寺崎廣業の美人画を出品したら印刷でした。小生も事前に見ていましたが、遠目には肉筆に見えました。よく見ると解ったでしょうが・・。

先日も鈴木松年の「鍾馗之図」を業者から送ってもらったのですが、「肉筆」という業者からの説明でしたがよく見ると印刷でした。



写真では肉筆に見えますがこれは印刷です。



本作品のようなものより厄介なのが、線描が印刷で手彩色されている作品です。



最近の印刷などの複製は印章に「工芸印」を使い区別していますが、初期の頃の印刷はその区別すらしていません。



近代から現在も中国の作品は精巧な印刷を用い、見てみても全く肉筆と同等の仕上がりのものが数多くあります。印刷も贋作も値段がつく中国市場ですので贋作を製作しているという意識がないかもしれません。



本作品は墨の滲みがないということで判定できますが、滲みまで再生していることがありますので要注意です。



横山大観は自身の作品の複製があまりにも良く出来ていたので感心したという文章を読んだことがあります。

日本では印刷は全く価値がないという事実は動かしがたいことです。本作品はむろん返品、返金となりました。「ん?」、「印刷でもいいから良い作品ではないか」という御仁はご自由に・・。そこまで許容するとコレクションがでたらめになります。贋作も然り・・。コレクションは淘汰し、作品数を少なくすることも大切です。









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