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Channel: 夜噺骨董談義
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冨士 福田豊四郎筆 その19

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本日紹介するのは父が亡くなった際に、小生が父から譲り受けた作品のひとつです。まだ小生が中学生の頃ですが、結局のところ親から譲り受けたのは骨董・・・。

福田豊四郎と父は友人であり、父は事業の傍ら福田豊四郎から絵を習っていました。祖父や祖母の代から福田豊四郎とは交流があり、多くの作品を描いてもらったようです。父が亡くなった際には、父の世話になった方への色紙を福田豊四郎氏に描いたもらったようで、父が亡くなったあとも母や姉は交流があったそうです。そのような経緯で小生に伝世してきた数少ない作品のひとつです。

最近になって、父の記事をインターネットで見つけました。郷里での記事ですが、取材に答えての記事の内容のようです。インターネットで祖父を題材にした本を家内が見つけたり、今また父のことに関する記事が見つかり、古い記事でもインターネットによって見つかるのは驚きです。

昭和40年の記事で、小生が中学校1年の時に亡くなっていますので、亡くなる直前の記事です。父は祖父が興した木材業を手伝う傍ら、分離してプレハブの会社を設立したばかりでした。東北で始めてのプレハブに企業化に挑んだのです。

*************************記事の内容***************************

父の発言を取り上げています。なにしろ昭和40年の東北の田舎の話です。『』が父の発言です。

『コツコツ貯め、やっとある程度の金ができたと思ったら諸物価値上りで計画がおジャン、その問についつい貯えに手をつけてしまって元のモクアミにかえったという人も案外多いようだ。せっかく当った金融公庫の貸付けを棄権する人も、そんな理由で頭金が不足するからだ。労働組合で結束して賃上げを要求するご時勢だ、そのエネルギーの一部を、そういう社会制度を作る運動にふり向けたらどうだろう――』

『日本人は、もっともっと、自分の家を持つということに対してドン欲にならねばならないのではないか。ハワイでは、大学を卒業して会社に就職すると希望者にはまず会社が金を貸して家を建てさせるという。快適な環境に住んで、充分に会社のために働いてもらおうという考え方である。日本はその反対で、一生あくせく働いてやっと退職金で家を建てる。粒々辛苦のあげくの新居に、当の本人は何年も住まないうちにあの世行きだ』

自らの《住いの哲学》の実行のために、昨年七月からプレハブ住宅の製造販売をはじめた。東北では、初めての企業化である。プレハブ住宅は、規格による量産だからコストが安く、組立て式だから工期の早いのが特徴である。諸外国の例をみるまでもなく、高層建築以外の住宅などは将来すべてプレハブ式にとってかわるだろうと予想される。

『五十年以上も使用する住宅の高い、安いを単に"金高"で論ずること自体誤りではないか。骨組みは鉄骨、外壁に法定不燃材のカラーベスト(セメント)と石綿などの混合したもの)を、内壁には断熱材を用いた住宅を、旧来の家の観念で同一すべきではない。理屈から言っても自社の材木を使い、一日手間千五百円の大工が数日がかりでやるカンナやノミの仕事を日給五百円の女工と機械が数時間で仕上げ、そして製作から販売までの間に一切の中間マージンを排除している"商品"が、高いはずはありえないではないか。消費者が"終いの栖家"となる家というものに対する観念を改めることも今後の住宅問題を考える上で大切なことである』と力説する。

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この記事の直後に、志半ばで父が病気で亡くなり、母が会社を引き継いだのですが、プレハブ化は仮設の建物に適用されていきました。小生も高校生や大学の頃、プレハブの工場で働いたのを懐かしく思い出します。父の志は小生の中に今も生きているように思います。

さて、本題の本日の作品です。

冨士 福田豊四郎筆
絹本着色軸装共箱二重箱軸先象牙 
全体サイズ:横733*縦1550 画サイズ:横570*縦485



本作品は小生のお気に入りの作品のひとつです。叔父の家にも富士の作品が一点ありましたが、だいぶ痛んでいたのと、叔父が亡くなってから散逸したようでとても残念です。



小生が初めて購入した福田豊四郎の作品はやはり富士の作品で、まだ若い頃の作品です。いつか機会がありましたらまた紹介します。



印章や落款で製作時期がわかるようですが、恥ずかしながらいつでもできると思っているうちに未整理のままです。

 

小品ばかりですが、かれこれ50点を超える作品の数になりましたが、少し整理して数を減らそうと思っています。

 

日本画家で富士というと横山大観、片岡珠子、奥村土牛・・・、これらの作品も見事ですが、この作品も私は見事だと思います。



富士に魅せられている人は多くいるでしょうが、遠くにいる人はそうそう簡単には見れなかった時代、富士を描いた作品は珍重されたのでしょうね。



また戦争中などは国民を鼓舞するためにも残念ながら利用されたこともあったと聞いています。



今では心静かに作品を楽しみましょう。父もきっと絵を愉しんだことでしょう。



表具は祖父が依頼しておこなったようで、非常に品のある表具がされています。



一時的に整理のため帰京に際して持ってきておりますが、本来は郷里に収納しておくべき作品ですので、近いうちにまとめて郷里に戻す予定です。

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