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氏素性不明作品 呉須(州)赤絵写? 鳥獣紋碗 その1

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昨日の閲覧者数が4200件以上というのは初めての異常値です。訪問者数は相変わらずの300名前後ですから、訪問者数が増えたことによるものでもないようです。いったいなにが起きたのやら??

本ブログのアクセス件数の多い記事(人気記事と称するようです)は最新記事以外は日替わりに変わるようです。ですから何にアクセスが集中しているのかは解りませんが、当方はマイペースで休日に作品を整理しています。

さて本日は赤絵の碗の作品です。

古くより明末の中国陶磁として珍重されたもののひとつに、呉須(州)赤絵と呼ばれる作品群があります。これはベンガラに熔剤を加えた酸化第二鉄を釉薬とした、赤色が基盤となっている磁器で、奔放な絵付けと力感のある色彩と造形に特徴があります。

呉須赤絵は呉州手とも称され、古染付と同じように中国の明朝末期から清朝初期にかけて焼成された焼き物ですが、同時期に古染付もあり、古染付とどこが違うかというと、古染付が現在の江西省景徳鎮で作られた焼き物であるのに対して、呉州手は福建省南部で作られた焼き物であり、その産地が全く異なる作品群です。

呼び名の由来は、その名の示すとおり「呉州」、すなわち三国志で知られる「呉」の国の領域あたりで作られた焼き物であるという認識から付けられたものと考えられています。

当時「南京手(なんきんで)」と呼ばれた景徳鎮の焼き物と区別する必要性から付けられた名称のようです。欧米では、この呉州手が船積みされた貿易港・汕頭の名前から、「スワトウ・ウェア」と呼ばれています。



これまで、明時代から清初の焼造でありながら景徳鎮窯の出土がなく、生産地が不明でしたが、近年の発掘成果により、福建省南部の漳(ショウ)州窯の焼造であることが有力視されています。現在中国では、この地域の明時代の地域名である「漳州(しょうしゅう)」の名を冠し、「漳州窯系磁器」と呼び始めているようです。




製造された時期については、萬暦年間(1573〜1619)末から天啓年間(1621〜1627)を中心とする頃と想定され、日本をはじめ、東南アジアや西アジアにも分布することから、広くアジア地域に輸出されたものと考えられています。すべてが輸出専用で中国本土には作品は残っていないようです。

輸入されて流通しだすことにより日本の九谷、京都では「呉須赤絵写」が多数作られ、精巧なものは区別がつきにくいものがあります。また安南でも同じように「呉須赤絵写」が作られました。



さらには中国本土でも時代が下がるにしたがって、作風に違いができ評価が分かれるものがあります。このように一般的に「呉須赤絵」と呼ばれる作品群にはいくつもの産地や多様性があります。



これら呉州手の器は、日本国内では安土桃山時代末期から江戸初期にかけての近世都市遺跡において多くの出土例があります。特に大皿などは当時の富裕階層に人気を博し、競うようにして買い求められ、各地の旧家の蔵に納まり、宴席ともなればその財力を誇示するかのように中心に据えられ大いに使用されたようです。そしてこの呉州手大皿の人気は、やがて唐津や伊万里などで大皿が焼成される動機ともなりました。

本日は今まで紹介してきたそのような大皿ではなく碗という小作品です。


呉須赤絵写鳥獣紋碗
合箱入
口径144*高台径74*高さ60



桃山から江戸にかけて大量に輸入され、茶人や富裕層から珍重された呉州赤絵の器ですが、寛文元年(1661年・順治1年)、清朝が「遷界令(せんかいれい)」という福建・広東省住民の強制移住政策を断行するにいたって、その輸入はぱったりと途絶えてしまいました。

日本国内の呉州赤絵に対する需要は衰えず、京焼の尾形乾山や奥田頴川、永楽保全ら、実に多くの陶工たちがその写しを作っています。また尾張犬山焼は呉州赤絵を模した独特の作風で知られています。

本作品のように茶碗のような大きさのものは本来中国本土の焼き物には少なく、本作品も「安南手」として売られていましたが、釉薬、胎土から前述の日本製の可能性が高いと思われます。京都の粟田口焼の可能性があります。

砂付高台と判断できない点もその理由のひとつです。ただ高台まわりの粗雑さは味があり、日本で作られたものとしても本歌にひけをとりませんし、絵付けの洒脱さが生きています。



形がいびつな点も捨てがたい味があります。以前に形の整った茶碗を入手しましたが、見込み中央に「魁」の文字が描かれておりましたが、全体に整いすぎていて味がなく明治以降の写しだろうと判断して売却したことがあります。この作品はおそらく犬山焼であったと思われます。

生産地いかんにかかわらず、呉須赤絵の鑑賞のポイントは「奔放な絵付けと力感のある色彩と造形」にあります。



本作品は「碗」となっていますので「茶碗」にはどうかな? この作品でお薄をいただくのもまた一興



というこで家内のお茶会の友人から頂いたカステラを賞味させていただきながらお薄を一碗・・。



なかなかのお茶碗です 赤絵のお茶碗としては滅多にない佳品??。口縁の欠けた部分は当方で急繕いで金繕い・・。

愛嬌のある鳥獣の絵付けが見どころですね。 



本ブログで投稿された「呉須赤絵」の作品の中で、中国本土で作られた作品で「奔放な絵付けと力感のある色彩と造形」という点で評価できる作品は少ないかと思いますが・・。リンクした作品は意外とアクセス件数が多いようです。



本当の意味での「呉須赤絵」の器はお茶会などでなかなかお目にかかれません。なぜでしょうね・・?? お茶会では家元の流派の関係のある器が多いせいかもしれませんし、女性の好みには合わない粗野さのせいかもしれません。



本来の「呉須赤絵」、日本の「赤絵写」、清以降の綺麗な「呉須赤絵」、東南アジアの「赤絵写」・・、ともかく陶磁器は判別が難しいし、人によって評価がまちまちなので戸惑うことばかり

茶溜りが花の赤絵とコントラストになって実に美しい。このような景色を楽しめることもこの作品のみどころ・・。



「呉須赤絵」・・、興味のある方は是非ひとつ・・。

この歪さがまた楽しい・・。呉須赤絵・・・桃山、江戸、そして近現代という長きに亘って、これほど日本人に愛され、日本人の生活に溶け込んできた中国陶磁も珍しいでしょう。




家内との一服で使ったもうひと碗は浜田庄司の地釉縁黒茶碗・・。



持ち味の違う碗で愉しむのもまた一興




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