古染付や南京赤絵よりさらに貴重価値の高いとされたのが天啓赤絵の作品。そのことから古くから模倣作品が横行していたと推測されます。
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贋作考 伝明末天啓赤絵 高士図五寸皿一対誂箱口径160*高台径*高さ30
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本ブログでは真贋はともかく幾つかの天啓赤絵や南京赤絵と称する作品を紹介していますが、あらためてその作品についての記述された記事を紹介します。
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天啓赤絵:古染付と時同じくして天啓年間(1621~27)にはじまり、中国明末期の天啓・崇禎年間(1621〜1644)に景徳鎮で焼成された色絵磁器に倣った景徳鎮の民窯にて焼かれた赤絵の作品のこと。
厳密には明末の天啓年間(1621‐27)から清初にかけてのわずか7年間に製作された作品を俗に「天啓赤絵」と称しています。萬暦まで続いた官窯様式から脱却した古染付に朱・緑・黄にて上絵付を施している作品です。その特徴は古染付とほぼ同様ですが、古染付と比してその生産量はかなり少ないものです。
この年款のある簡素瓢逸な赤絵の器がわが国に多く遺存していますが、天啓赤絵は中国では遺品がまれで、わが国にだけ多く珍蔵されていることから、おそらく日本向けの輸出品であったろうといわれます。これらはどれも極彩色ではなく、日本人好みの洒落た染付の絵に数色を上絵付して加え、文様のない余白が多い作品です。
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これらの背景としては、この時代は明の国威が次第に振るわなくなり、景徳鎮への製陶の用命も途絶えました。そのため従来の官窯のような精器はほとんどできなかったもののようですが、自由奔放な古染付や天啓赤絵、そしてヨ一ロッパ向けの染付、西洋風食器を盛んに製出して繁盛していましたようです。
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一方で粗雑な器皿,福建省あたりでは奔放な絵付の呉須赤絵が焼造されましたが,これらは日本の茶人たちに愛好され,日本の赤絵の発展に大きな影響を与えました。古九谷もまさに影響を大きく受けた作品群です。
天啓赤絵はわりと斬新で大らかな絵柄が多く、絵付けは粗いものの、朱色・緑色・黄色・青色などが使われています。土青による濃青な発色をうまく使い、様々な器形に合わせて絵画的な表現を用いて絵付を行っています。それまでの型にはまった様式から一歩踏み出し、自由奔放な筆致で明末文人画を例にとった山水や花鳥、羅漢・達磨など描いており、それ以前の景徳鎮ではこのように自由な作例はみられず、民窯であったからこそ陶工の意匠を素直に表した染付や赤絵を生み出すことができたと思われます。
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古染付には「大明天啓年製」「天啓年製」あるいは「天啓年造」といった款記が底裏に書かれていることがあり、この他にも「天啓佳器」といったものや「大明天啓元年」など年号銘の入ったものも見られます。
また年号銘でも「成化年製」「宣徳年製」など偽銘を用いた作例もあり、優品を生み出した過去の陶工に敬意を払いつつもそれまでの様式にとらわれることはなかったようです。これら款記は正楷書にて二行もしくは三行であらわされるのが慣例とされていましたが、款記と同じく比較的自由に書かれており、時代のとの整合性というよりも、まるで文様の一つとして捉えていたようにも思えます。
天啓赤絵もまた同様と考えられますが、一般的には「天啓年製」などの銘を伴うものが多く、真偽は不明ですが、無銘であれば清朝初期の品であると言われています。
*天啓とは中国明朝熹宗の治世七年間(一六二II七)の年号。天啓官窯には明朝歴代のように大明天啓年製と款した器物はほとんど見当たらず、単に天啓年製と輪郭なく二字二行にしたためた染付が最も多いといわれます。
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天啓で使われていた陶土は決して上質のものではなく、そのため焼成時に胎土と釉薬の収縮率の違い、特に口縁部は釉が薄く掛かるために気孔が生じて空洞となり、冷却時にその気孔がはじけて素地をみせるめくれがのこってしまう。
本来、技術的には問題となるところを当時の茶人は、虫に食われた跡と見立て鑑賞の対象としました。このことが「虫喰い」と称して、古染付・天啓赤絵に特有の特徴であることも知られています。
高台は、当時の通例の如く、細砂の付着した砂高台で、高台内には鉋の跡が見られるのが特徴ですが、必ずしもそうでない作品もあるようです。
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南京赤絵は清朝まで続きますが、天啓赤絵は清初までであり、清朝に本格的には入らず、他の赤絵の南京赤絵等、明末窯の注文作品よりも製作期間が短く、圧倒的に数が少なく、そのため貴重価値の高い作品群となっています。無論、古染付と比してもその生産量はかなり少ないようです。
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同時期の天啓赤絵と南京赤絵の区別は、天啓赤絵は古染付の上に色釉を施し、南京赤絵は色釉だけで彩画した赤絵で有ると分類されていますが、例外は勿論有る様です。
南京赤絵の染付は銘など一部に限られており、南京赤絵は華麗な意匠のものが多く、口縁には鉄砂で口紅が施されるもの、金彩を加えた豪華なものもあります。同時期の作品群は五彩や色絵祥瑞等も含め、少しややこしいですが、それぞれの作風を持っています。
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以上がおおまかな天啓赤絵に関する一般的、かつ多少当方の見解も含んだ考察です。
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天啓赤絵の作品の数は非常に少なく、あったしても歪んだものや小さめの皿などが多く、五寸を超える作品は稀有といっていいとされているようです。
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後世に写しの作品、古染付に後絵付けされた作品などがたくさんあるようです。
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本作品の真偽は当方の知る由もありませんが、模倣と決めつける前に、よくできていますし、対になっているのは面白いかな・・。
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描かれているのは高士と従者、草花に太鼓石・・??
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虫喰いに砂付高台、鉋跡と完璧な特徴を備えていますが・・。ただとくに虫喰いは細工されている作品が多くあるようで、わざとらしい虫喰いは疑ってかかるべきなようです。砂付高台や鉋跡はそれなりにできるのかな??
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同じような大きさの作品において著名な作例は下記のような作品があります。
参考作品 東京国立博物館蔵天啓赤絵群馬文皿高3.2 口径16.8 底径6.8
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上記写真は対になっていますが、おそらく揃いで数多く作ったのでしょう。
参考作品 愛知県美術館蔵青花五彩群牛図盤(天啓赤絵)
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絵柄が稚拙とおもえる作品ですが、洒脱で面白いのが天啓赤絵の作品の真骨頂・・。本作品は絵付けの洒脱さが今ひとつなような気がします。
ともかく天啓赤絵の特徴を備えているからといって、価値があるとは考えないほうがいいようです。あくまでも作品が面白いかどうかがポイントであり、飾っておくよりも普段使うには健康的ですね。
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贋作考 伝明末天啓赤絵 高士図五寸皿一対誂箱口径160*高台径*高さ30
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天啓赤絵:古染付と時同じくして天啓年間(1621~27)にはじまり、中国明末期の天啓・崇禎年間(1621〜1644)に景徳鎮で焼成された色絵磁器に倣った景徳鎮の民窯にて焼かれた赤絵の作品のこと。
厳密には明末の天啓年間(1621‐27)から清初にかけてのわずか7年間に製作された作品を俗に「天啓赤絵」と称しています。萬暦まで続いた官窯様式から脱却した古染付に朱・緑・黄にて上絵付を施している作品です。その特徴は古染付とほぼ同様ですが、古染付と比してその生産量はかなり少ないものです。
この年款のある簡素瓢逸な赤絵の器がわが国に多く遺存していますが、天啓赤絵は中国では遺品がまれで、わが国にだけ多く珍蔵されていることから、おそらく日本向けの輸出品であったろうといわれます。これらはどれも極彩色ではなく、日本人好みの洒落た染付の絵に数色を上絵付して加え、文様のない余白が多い作品です。
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これらの背景としては、この時代は明の国威が次第に振るわなくなり、景徳鎮への製陶の用命も途絶えました。そのため従来の官窯のような精器はほとんどできなかったもののようですが、自由奔放な古染付や天啓赤絵、そしてヨ一ロッパ向けの染付、西洋風食器を盛んに製出して繁盛していましたようです。
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一方で粗雑な器皿,福建省あたりでは奔放な絵付の呉須赤絵が焼造されましたが,これらは日本の茶人たちに愛好され,日本の赤絵の発展に大きな影響を与えました。古九谷もまさに影響を大きく受けた作品群です。
天啓赤絵はわりと斬新で大らかな絵柄が多く、絵付けは粗いものの、朱色・緑色・黄色・青色などが使われています。土青による濃青な発色をうまく使い、様々な器形に合わせて絵画的な表現を用いて絵付を行っています。それまでの型にはまった様式から一歩踏み出し、自由奔放な筆致で明末文人画を例にとった山水や花鳥、羅漢・達磨など描いており、それ以前の景徳鎮ではこのように自由な作例はみられず、民窯であったからこそ陶工の意匠を素直に表した染付や赤絵を生み出すことができたと思われます。
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古染付には「大明天啓年製」「天啓年製」あるいは「天啓年造」といった款記が底裏に書かれていることがあり、この他にも「天啓佳器」といったものや「大明天啓元年」など年号銘の入ったものも見られます。
また年号銘でも「成化年製」「宣徳年製」など偽銘を用いた作例もあり、優品を生み出した過去の陶工に敬意を払いつつもそれまでの様式にとらわれることはなかったようです。これら款記は正楷書にて二行もしくは三行であらわされるのが慣例とされていましたが、款記と同じく比較的自由に書かれており、時代のとの整合性というよりも、まるで文様の一つとして捉えていたようにも思えます。
天啓赤絵もまた同様と考えられますが、一般的には「天啓年製」などの銘を伴うものが多く、真偽は不明ですが、無銘であれば清朝初期の品であると言われています。
*天啓とは中国明朝熹宗の治世七年間(一六二II七)の年号。天啓官窯には明朝歴代のように大明天啓年製と款した器物はほとんど見当たらず、単に天啓年製と輪郭なく二字二行にしたためた染付が最も多いといわれます。
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天啓で使われていた陶土は決して上質のものではなく、そのため焼成時に胎土と釉薬の収縮率の違い、特に口縁部は釉が薄く掛かるために気孔が生じて空洞となり、冷却時にその気孔がはじけて素地をみせるめくれがのこってしまう。
本来、技術的には問題となるところを当時の茶人は、虫に食われた跡と見立て鑑賞の対象としました。このことが「虫喰い」と称して、古染付・天啓赤絵に特有の特徴であることも知られています。
高台は、当時の通例の如く、細砂の付着した砂高台で、高台内には鉋の跡が見られるのが特徴ですが、必ずしもそうでない作品もあるようです。
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南京赤絵は清朝まで続きますが、天啓赤絵は清初までであり、清朝に本格的には入らず、他の赤絵の南京赤絵等、明末窯の注文作品よりも製作期間が短く、圧倒的に数が少なく、そのため貴重価値の高い作品群となっています。無論、古染付と比してもその生産量はかなり少ないようです。
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同時期の天啓赤絵と南京赤絵の区別は、天啓赤絵は古染付の上に色釉を施し、南京赤絵は色釉だけで彩画した赤絵で有ると分類されていますが、例外は勿論有る様です。
南京赤絵の染付は銘など一部に限られており、南京赤絵は華麗な意匠のものが多く、口縁には鉄砂で口紅が施されるもの、金彩を加えた豪華なものもあります。同時期の作品群は五彩や色絵祥瑞等も含め、少しややこしいですが、それぞれの作風を持っています。
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以上がおおまかな天啓赤絵に関する一般的、かつ多少当方の見解も含んだ考察です。
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天啓赤絵の作品の数は非常に少なく、あったしても歪んだものや小さめの皿などが多く、五寸を超える作品は稀有といっていいとされているようです。
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後世に写しの作品、古染付に後絵付けされた作品などがたくさんあるようです。
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本作品の真偽は当方の知る由もありませんが、模倣と決めつける前に、よくできていますし、対になっているのは面白いかな・・。
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描かれているのは高士と従者、草花に太鼓石・・??
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虫喰いに砂付高台、鉋跡と完璧な特徴を備えていますが・・。ただとくに虫喰いは細工されている作品が多くあるようで、わざとらしい虫喰いは疑ってかかるべきなようです。砂付高台や鉋跡はそれなりにできるのかな??
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同じような大きさの作品において著名な作例は下記のような作品があります。
参考作品 東京国立博物館蔵天啓赤絵群馬文皿高3.2 口径16.8 底径6.8
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上記写真は対になっていますが、おそらく揃いで数多く作ったのでしょう。
参考作品 愛知県美術館蔵青花五彩群牛図盤(天啓赤絵)
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絵柄が稚拙とおもえる作品ですが、洒脱で面白いのが天啓赤絵の作品の真骨頂・・。本作品は絵付けの洒脱さが今ひとつなような気がします。
ともかく天啓赤絵の特徴を備えているからといって、価値があるとは考えないほうがいいようです。あくまでも作品が面白いかどうかがポイントであり、飾っておくよりも普段使うには健康的ですね。