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五彩手(清朝初期 天啓赤絵?) 山水草花文八角小皿

中国で作られた天啓赤絵や南京赤絵らの作品を五彩と称することもあり、さらにそれ以降の官窯に発展していく過程の色絵の作品も総じて「五彩」と称するようです。さらにはその影響を受けた古九谷や古伊万里もまた同じような作品を製作しているため、その判別と分類はますます難しくなるようです。
当方はその分類が未だに良く分からずにいますが、茶人に好まれた天啓古染付、天啓赤絵、南京赤絵やその当時の赤絵五彩の作品には魅了されています。
本日の紹介する作品は、3万円弱で購入した愛らしい?小皿です。
五彩手(清朝初期 天啓赤絵?) 山水草花文八角小皿誂箱最大幅160*縦150*横144*高台径70*高さ32
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本作品は口紅(口縁の鉄釉)や太陽を表す絵柄など明末・清初の中国の特徴が見られ、南京赤絵や天啓赤絵に倣っている古伊万里ではないかとも推察され、また古九谷様式古伊万里とかもあり、なんとも判別しがたいところですが、本作品は清初の天啓赤絵に分類してよいと推測しています。
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天啓赤絵は古染付と時同じくして天啓年間(1621~27)にはじまり、中国明末期の天啓・崇禎年間(1621〜1644)に景徳鎮で焼成された色絵磁器に倣った景徳鎮の民窯にて焼かれた赤絵の作品のことです。
厳密には明末の天啓年間(1621‐27)から清初にかけてのわずか7年間に製作された作品を俗に「天啓赤絵」と称しています。萬暦まで続いた官窯様式から脱却した古染付に朱・緑・黄にて上絵付を施している作品です。その特徴は古染付とほぼ同様ですが、古染付と比してその生産量はかなり少ないものです。また天啓赤絵は中国にはほとんど遺品がなく、日本にしかみられないことから、日本からの注文品とみなされています。
*本作品もまた日本からの注文品で揃いであったのでしょう。本作品は非常に薄手で完品で遺っているのは非常に珍しいと思います。
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粗雑な器皿,福建省あたりでは奔放な絵付の呉須赤絵が焼造されましたが,これらも日本の茶人たちに愛好され,日本の赤絵の発展に大きな影響を与えました。古九谷もまさに影響を大きく受けた作品群です。天啓赤絵はわりと斬新で大らかな絵柄が多く、絵付けは粗いものの、朱色・緑色・黄色・青色などが使われています。土青による濃青な発色をうまく使い、様々な器形に合わせて絵画的な表現を用いて絵付を行っています。それまでの型にはまった様式から一歩踏み出し、自由奔放な筆致で明末文人画を例にとった山水や花鳥、羅漢・達磨など描いており、それ以前の景徳鎮ではこのように自由な作例はみられず、民窯であったからこそ陶工の意匠を素直に表した染付や赤絵を生み出すことができたと思われます。
*天啓赤絵は人物や魚・動物が描かれていることが多く、このような絵柄の作品は珍しいかな?
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古染付には「大明天啓年製」「天啓年製」あるいは「天啓年造」といった款記が底裏に書かれていることがあり、この他にも「天啓佳器」といったものや「大明天啓元年」など年号銘の入ったものも見られます。また年号銘でも「成化年製」「宣徳年製」など偽銘を用いた作例もあり、優品を生み出した過去の陶工に敬意を払いつつもそれまでの様式にとらわれることはなかったようです。これら款記は正楷書にて二行もしくは三行であらわされるのが慣例とされていましたが、款記と同じく比較的自由に書かれており、まるで文様の一つとして捉えていたようにも思えます。天啓赤絵もまた同様と考えられますが、一般的には「天啓年製」などの銘を伴うものが多く、無銘であれば清朝初期の品であると言われています。
*本作品は銘もなく、虫喰い・砂高台も顕著な特徴も少ないことから清朝初期の天啓赤絵と推定していますが、素人判断ですのでご容赦願います。      
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天啓で使われていた陶土は決して上質のものではなく、そのため焼成時に胎土と釉薬の収縮率の違い、特に口縁部は釉が薄く掛かるために気孔が生じて空洞となり、冷却時にその気孔がはじけて素地をみせるめくれがのこってしまう。本来、技術的には問題となるところを当時の茶人は、虫に食われた跡と見立て鑑賞の対象としました。このことが「虫喰い」と称して、古染付・天啓赤絵(南京赤絵)に特有の特徴であることも知られています。高台は、当時の通例の如く、細砂の付着した砂高台で、高台内には鉋の跡が見られるのが特徴ですが、必ずしもそうでない作品もあるようです。
*本作品は高台の作りは砂高台の跡はなく、古伊万里特有のイッチンの跡もありません。生掛けの感じがしますが、詳細は不明です。ただ焼成時において胎土と釉薬の収縮率の違いは見られます。
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当方で所蔵している下記の作品は南京赤絵を模倣した古伊万里と推定されます。
五彩南京赤絵手 古伊万里中皿誂箱口径187*高台径114*高さ27
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根拠は高台内のイッチンの跡です。表だけ見ると南京赤絵の作品と全く区別がつきませんね。
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入手時は汚れていたり、割れの補修跡が醜いので、洗浄して金繕いすると下記の写真のように分かりやすくなりますね。
*売っている作品はときにわざと汚くしている?ので要注意ですね。
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裏面では明らかに釉薬が違い、古伊万里の釉薬と判断できます。
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本作品は高台内のイッチンの跡・高台周りの二重線などの古伊万里の特徴を持ってます。図柄は太鼓石や鳥などの文様は中国の南京赤絵を倣っており、贋作というより中国からの影響が大きい古伊万里の作品なのでしょう。
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この手の作品を南京赤絵とすると贋作になります。南京赤絵は口径が13センチ程度ならわりと廉価(ただし単なる古伊万里よりは10倍はする)なのですが、それを超えたサイズの作品(さらに10倍になる?)は高くなるため、この手の作品や近代の模倣した作品を南京赤絵と称してしまうのでしょう。
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南京赤絵は清朝まで続きますが、天啓赤絵は清初までであり、清朝には本格的には入らず、他の赤絵の南京赤絵等、明末窯の注文作品よりも製作期間が短く、圧倒的に数が少なく貴重な作品群となっています。無論、古染付と比してもその生産量はかなり少ないようです。
下記の3作品は左から天啓赤絵手、古伊万里手、南京赤絵手を並べたものです。
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同時期の天啓赤絵と南京赤絵の区別は、天啓赤絵は古染付の上に色釉を施し、南京赤絵は色釉だけで彩画した赤絵で有ると分類されていますが、例外は勿論有る様です。南京赤絵の染付は銘など一部に限られており、南京赤絵は華麗な意匠のものが多く、口縁には鉄砂で口紅が施されるもの、金彩を加えた豪華なものもあります。同時期の作品群は色絵祥瑞等も含め、少しややこしいですが、それぞれの作風を持っています。
*古伊万里手は高台や輪線の特徴があります。とくに輪線は贋作の意図のあって作品にはないのでしょう。
**天啓赤絵と五彩手の判別も難しいのですが、天啓赤絵は基本的に古染付に色釉を施したもの・・。間違いないのは本日紹介した作品は「五彩手」としておけば間違いはないのでしょう。
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南京赤絵:17世紀に入ると各地で農民の反乱が相次ぎ明王朝は衰退しその結果景徳鎮の官窯は消滅しましたが、民窯はしたたかに生き残りむしろ自由闊達な赤絵を作りはじめます。これを南京赤絵と称します。藍色の染付色はないのが特徴です。
所蔵している下記の写真左は南京赤絵かな・・。これも日本の模倣作品との区別は難しいようですね。
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今から350年くらい前の中国明時代末期から清王朝初期に掛けて景徳鎮の民窯で作られた南京赤絵。 当時の主要な輸出品で西欧諸国に売ったものは壷や花生けや蓋ものなど大作が多く、 ところが日本に輸出したものは茶道具あるいは鉢や小皿中皿など食器が多いとされます。 デザインも日本人好みの余白を十分とった絵画的な構成になっており、縁は鉄釉いわゆる口紅というもので隈取してあります。これは口縁の虫喰いを防止するための南京赤絵の手法(時代が下がるとないものもある・・???)とされており、この口紅(口縁の鉄釉)は本来、日本の伊万里には必要のないものですが、古伊万里や古九谷はそれを倣っている作品が数多くあります。このように南京赤絵や天啓赤絵の作風は日本の色絵古九谷や色絵古伊万里に大きく影響し、多くの点で近似し、時には中国のものと日本のものが混同されがちです。
中国の天啓赤絵、南京赤絵、そこから派生した五彩手、そして日本で作られた古九谷、古伊万里、近代から現代まで模倣した作品と混在し、これらはほとんど日本にあるので、魑魅魍魎としていますね。入り口にさしかかたばかりで当方の手に負えないと思いますが、それでも少しずつ知見を高めようと思います。



















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