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Channel: 夜噺骨董談義
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源内焼 その54 三彩陽刻松ニ塔図皿

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「源内焼に贋作はないのか?」という問いに対して厳密に言うと「無い」というか「作れない、もしくは作らなかった」というのが正しい表現かと思います。たしかに明治期の復興された作品群や四国の焼きものに似たようなものはありますが、このような精密な型で作られたものとは出来がまったく違います。ある程度本物を手にしていると違いは一目瞭然です。ネットオークションなどに出品されている作品の多くはこのような亜流の作品で、本来の源内焼とは別のものです。

古九谷や初期伊万里、古伊万里のように中国製を含めて贋作が横行している作品群に比べると、判別しやすく安心して蒐集できる陶磁器群と言えます。ただ、お値段には大きなばらつきがあり、よほどの秀作でないかぎり10万は超えないものですが、時として10倍近いお値段で売っている場合がありますので要注意ですね。

源内焼 その54 三彩陽刻松ニ塔図皿
合箱
幅228*高台径152*高さ42

50作品を超えた源内焼の作品ですが、緑釉を基調とした三彩の源内焼である本作品のポイントは三点です。

1.ひとつは汚れ・・。購入当初は下記のように汚れがありました。



特に汚れが多かったのは裏面です。



見込み面はそれほどでもなかったですが・・。汚れを落とすとなにやら文字が・・。



源内焼は軟陶で吸水率が高く汚れやすいもので、しかも何年も注目されない作品でしたので埃にまみれていた可能性があります。



2.本作品の二つ目のポイントは「銘」です

見込み図中に判読不能な印章のようなものが押されている珍しい作品です。このように印銘のある作品はの幾つか存在し、希少価値の有るものらしいです。

源内焼の蒐集には下記の種類の作品を優先的に集めると良いとされています。

1、 地図皿                        ・・・市場には滅多に出てこない希少価値の高い作品)
2、 大型の抜けのよいもの                 ・・・30CM前後以上の作例は珍しい)
3、 印のあるもの(瞬民、志度瞬民、民など)        ・・・この作例は本作品に該当します。
4、 多彩釉(3~4彩、出来れば黒・藍などの色があるもの) ・・・黒や藍色を使った作品は珍しいです。
5、 擦れなどがなく、壊れていない完全なもの        ・・・保存状態のいいもので完品は意外に少ない

本作品は3が該当しますね。



刻印されている銘印は他の作品に押印されている「皥々斉」(皥々斉は脇田舜民のこと)、「舜民」の各印などと関連しそうです。本作品の印章は「舜」のように思われ、明治の作によく使われる「鳩渓」は源内をさしますが、「舜民」の関連印がある場合は源内の指導を受けた脇田舜民の作、または関連した窯の作品と推察され江戸期の作品となります。



3.三つ目は本作品の見所である山水図です。周囲の西洋的な紋様と相俟って、和洋の雰囲気のある源内焼独特の趣のある作品となっています。



山水の図柄もいいですね。



ただ口縁の外周部は柔らかく、多少痛んでいます。柔らかいのでどうも口縁から痛むようです。



本作品の図柄は作品事例には掲載がなく、印銘を含めて興味深い作品のように思います。地図絵の皿などのような作品もいいものですが、このような小作品から中程度の大きさの作品も源内焼は古九谷の作品と同じように愉しめます。


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