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Channel: 夜噺骨董談義
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忘れ去られた画家 月夜杉図 渡辺省亭筆 その4

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宅配を利用する機会は多いのですが、ゆうパックと宅急便とのサービスの差は歴然としており、ゆうパックのサービスの悪さは不愉快極まりないものです。

まず配達員の対応・態度が悪い。
不在の対応が不親切。ドライバー直通電話の欄はあるが書いていたためしがない。
           (宅急便には必ず明記され、その日のうちに再配達される)
          自動受付で機械的でお年寄りには難しい。
           (郵便局に取りにいくか、翌日以降となる)
オペレーター対応もまた態度が横柄です。

これは全国的なことのようで、社員教育がなっていないという以前に企業風土がお粗末です。

ゆうパックは極力というより、まずは使うことはやめましょう。当方では取引にゆうパックの指定の配達をお断りしています・・・。

さて本日の渡辺省亭という日本画家をご存知の方は少ないかも知れませんが、海外では非常に高い評価を受けており、人気のある日本画家の一人です。

月夜杉図 渡辺省亭筆 その4
絹本水墨軸装 軸先象牙 合箱
全体サイズ:縦1870*横338 画サイズ:縦1070*横320



「明治19年(1887年)の第二回鑑画会大会に出品した「月夜の杉」で二等褒。これらの作品は所在不明で、図様すら分からない。」との記録がありますが、月と杉を題材とした作品は数点見受けられ、いずれ同時期の作と推察されます。月を題材にした作品を得意としたようですが、いずれ本作品のような作品であったのではないかと推察されます。



渡辺省亭は「巧い」画家ですが、現代の日本では「巧い」ことよりより特徴のある「旨み」のある画家が近年は好まれています。ただし渡邊省亭は日本国内より海外での評価がすこぶる高いそうです。



それゆえ海外に作品が多くあり、日本にある作品より海外にある作品のほうがレベルが高く、ロンドン、ニューヨークのメトロポリタン、ボストンにある作品は描き込みがしっかりしている作品となっています。明治20年代にはすでにある意味では画壇の主役でした。



そもそも最初は陶器の絵付けや図案で知られた画家で、当時の時代がそういうものを求めて、画家たちがそれに応えたものです。絵だけではなかなか食べていけない時代でしたから、絵付けをしたり図案を書いたりして海外に知られるようになったと推察されます。それが万国博覧会を通して次第に海外の展覧会に出すようになり、そこでの作品の多くが海外で買われました。省亭はパリ万博に実際に行き、日本の絵師のなかで最初にヨーロッパを見た画家でもあります。



パリ万博では図案や絵も描いて展示しており、フランス人のシャルパンティエという印象派のパトロンがおり、彼のサロンに出入りするようになって、そこで絵を描くデモンストレーションを行なっています。そこにおいて日本の気候や風土がよく感じられる絵を描いたと思われます。そのような作品は当時すごく人気を博し、そのうちの一枚を印象派のドガという画家にあげたという記録があります。絵のなかに「ドガ君に」と記されています。(鳥の作品:アメリカの大学の美術館蔵)



明治17年に日本で鑑画会がスタートします。東京大学に雇い教師で来ていたフェノロサと岡倉天心が共同で日本美術を復興させようという運動をし、フランスから帰国した渡辺省亭も参加しています。鑑画会の展覧会に出した省亭の作品をフェノロサが高く評価し、アメリカに持ち帰り、現在はメトロポリタンなどに展示されています。実に出来の良い作品で、フェノロサと岡倉天心を中心に東京美術学校ができたときも、円山四条派の教授としてフェノロサたちが考えていたのは省亭であったそうです。省亭は円山四条派と称されていますが、実は菊池容斎の流派であり、そのことから教授を省亭は辞退しています。一介の市井の画家として通すこととなりますが、ヨーロッパを知っている画家としての矜持のようなものあり、ほかの画家と馴染まないところがありました。その代わり海外の展覧会などには積極的に作品を出品しています。



日本で今ひとつ人気がないのは上記のような経緯からと推察されます。また展覧会受けする大きな作品がなかなかないということもあります。また弟子を一人もとらなかった点も理由のひとつであろうと思われます。



省亭のことを尊敬する画家に鏑木清方がおり、省亭の生き方に憧れていたと言われています。展覧会向けの大きな会場芸術ではなく、床間の芸術に終始一環していた省亭を尊敬し省亭の作品を大切に所蔵してたそうです。展覧会用に大きな絵を製作することより、床の間に飾れる作品を大切にする運動は平福百穂らが受け継ぎ運動を展開しましたが、現代ではそのことが省みられていません。この点もまた省亭の人気が現代で今ひとつである理由となっていることと推察されます。



現代では評価の低い掛け軸ですが、表具も含めて今一度心ある日本人は見直してみたらいかがでしょうか?

さてゆうパックはサーボス精神の欠ける宅配です。一部上場した場合には株主から真っ先に槍玉にあげられるでしょう。宅配の完全な負け組みとなり、お役所仕事を抜けきれなかった経営陣には大いに責任があります。

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