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Channel: 夜噺骨董談義
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氏素性の解らぬ陶磁器 松絵紋二彩唐津水指 伝古弓野焼(古武雄)

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もともとは甕・・・。雑器でしたが、水指に昇進・・・、ただの甕では焼き物としてつまらないですが、基本的に日常雑器が目的の弓野焼では稀有な水指の作品です。

ところで「弓野焼」、「二川焼」、「二彩唐津」、「武雄唐津」を総称して「古武雄(コダケオ)」と称しますが、この焼き物群を知っている方は少ないと思います。

松絵紋二彩唐津水指 伝古弓野焼
漆蓋 合箱(所蔵印在)
口径96*胴径175*底径*高さ145



このような形は日常用の甕には存在しないことから、何らかの理由(注文)によってか、もしくは他の用途の作品であったものを水指に見立てた作品と思われます。絵の力強さ、刷毛目も魅力充分で、緑釉の発色も見事であり、日常雑器としては捨てがたい理由があったので水指の用途にしたという推定のほう(見立て)が正しい推定のように思います。水指として使えるだけの野趣を備えています。



下部の刷毛目の文様は波のようにも見え、弓野焼や二川窯などの松絵甕の作品群に比しても小振りながら優品といえます。底は荒々しく、唐津焼に似ていますね。石はぜのある印部分からちょっと水漏れしましたが直しました。



箱には「二川焼」と記されていますが、弓野焼との双方の判別は非常に難しく、時代の特定も難しい作品群でありますが、出来の良さ、底の荒々しさなどから江戸期の弓野焼と思われます。緑釉がここまで発色のよい作品はあまり例がありません。



家内に見せたところ、水指に使う気あり・・・。ここまでキズのない古弓野焼もまた稀有らしい? 



*佐賀県西部の武雄市に住み、弓野に窯を築いている人間国宝の青磁陶芸家・中島宏氏が最大のコレクターです。2002年に根津美術館が、「知られざる唐津」と銘打ち、中島さんのコレクションを中心に、大きな展覧会を開いています。中島宏氏の作品は当ブログにも投稿されています。

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弓野焼:佐賀県武雄市弓野弓野焼(肥前国杵島郡西川登村大字小田志字弓野:佐賀県武雄市西川登町小田志字弓野)で焼かれた陶磁器。江戸の中期頃(寛永年間)から焼かれたと言われ、陶器は1532年(天文2年)より淵小七が企業したと伝えられます。1694年(元禄7年)になり江口林平が初めて磁器製造を開始し、その子福田林平が有田焼に倣って改良、さらに1839年(天保10年)頃再び改良して日用諸種の器を製造しました。明治の中期になり朝鮮向けの磁器または博多大形の模造をなす者がありました。この窯は1897年(明治30年)頃まで松の絵の水飯洞・提鉢をつくっていました。

唐津焼のひとつに分類され、鉄分を多く含んだ赤茶色の胎土のため白化粧土を施し、その上に銅緑釉と飴釉で松絵を流し描き(この技法から二彩と呼ばれる)、薄くかけられた透明釉の意匠のものが多く、これを松紋甕と称し、今では古武雄と正式な名称が与えられています。

胎土が柔らかく焼成も甘い(低温で長時間焼いているからヒビが入りやすい)ことから、殆どの残っている品に破損やひび割れが見られますが、その柔らかな見た目とおおらかな松絵の筆致で人気が高い作品です。

弓野焼の作品は棟方志巧によって見出され、民芸ブランドとして認知されています。柳宗悦らの民藝運動にて紹介されたことによって注目されたようですが、すでに戦前の山中商会の古民藝売立目録などにも紹介されています。その美しさに気が付いて昔から収集された方も多くいたと思われます。

大量生産され、まるで定められていたかのように文様は似ていて、陶工の画力に差はあるものの意匠的には殆んどのものが表は松絵を描き裏は草の絵を描いています。のちに福岡県の二川で、弓野から陶工を招き同じような意匠のものが焼かれたためその判別は難しいとされています。

二川窯:筑後国(現、福岡県)三池郡二川で焼かれた陶磁器。江戸時代末期頃に陶土の原料が発見され、弓野焼の職人を招いて製作された。刷毛目地に、鉄、銅で松などの絵付けをしたものが多い。

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なんでも鑑定団にも出品されたことがあります。



高いね、でも絵付けは見事な作品です。



釉薬にも味があります。



日本民藝館にも所蔵作品があります。緑釉がしっかりと絵付けしている作品には面白味がありますが、緑釉のうすい作品は魅力が半減していますね。



愛知県陶磁美術館にもまた所蔵作品があるようです。



「豪快な屏風絵のように力強く大胆な筆使い、コントラストが効果的でリズミカルな連続文様、即興的に掛け流した色鮮やかな釉(うわぐすり)など、多彩な表現は、まるでいろいろな作風の絵画のよう。現代アートにも通じるような斬新な表現は江戸のモダニズムと称されるなど、その芸術性が高く評価されつつあります。」ということらしい。



雑器とはいえ当方はいろんな焼き物の知識を持つというのはいいことだと思っています。「いい焼き物とはどういうものなのか?」、「希少価値はどのようなことからか?」 この世に知られいていないことというか、当方で知らないことは限りなく多い。


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