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葡萄図-19 天龍道人筆 その30

本日は久方ぶりに天龍道人の作品の紹介です。葡萄の画家と言われた天龍道人の作品です。

賛には「天龍道人 九十三歳」とあり、亡くなった歳の作と推察されます。印章には「天龍」と「公瑜」の白文朱方印と朱文白方印の連印が押印されており、その下には「三国?一家」の印が押印されている。93歳の作品は貴重でそれほど多くないようです。

葡萄図-19 天龍道人筆 その30
紙本水墨軸装 軸先木製 合箱
全体サイズ:縦1846*横401 画サイズ:縦1313*横292

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手前の刀剣の拵えは江戸期のものでしょう。

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螺鈿に蒔絵は見事です。

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刀剣の鍔も装飾的です。

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天龍道人の作品は80代、90代に於いて、独自の画境に到達したと評価されています。まさしく枯淡の作といわれるものです。その以前のみずみずしい作品を好むという評価もあるでしょうが、やはり天龍道人の作品は枯淡の作を最上作とすべきでしょう。

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天龍道人が本作品と同じく93歳の最晩年に描いた葡萄図の賛に下記のような記載があります。

「天下無人知我者 総道只蒲桃先生 
 看画不敢論工拙 東西各自伝虚声 
 我幸好以有此癖 風流一世得遯名
 鵞湖折脚仙 九十三才 天龍道人王瑾併題書」

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天龍道人は92歳、文政6年(1809年)脚疾を患っており、文政7年(1810年)の8月21日に亡くなっています。

天龍道人は不遇の人である。約300年前に鹿島鍋島藩の家老の子として生まれ、絵画と医術を習い、京では勤皇の活動をしていたが、藩主家の後継ぎ問題に父が巻き込まれ、改易となって流浪の人生が始まる。

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晩年自ら三国一家(三国一:日本・唐土・天竺の中で第一であること。世界中で一番であること)と呼称しましたが、天龍道人の葡萄の作品は、芸術の極地は葡萄の図にあります。

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「三国一家」の遊印のある渾身の傑出の作といえるでしょう。文化の研究者で文化功労者の中野三敏さん(武雄市出身)が、『江戸文化評判記』(中公新書)で、肥前が生んだ風流人として、煎茶(せんちゃ)道の祖とされる高遊外売茶翁(ばいさおう)とともに天龍道人を挙げています。

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改めて記述するまでもなく、天龍道人の名を不朽にしたのは、勤王の志ではなく葡萄(ぶどう)と鷹の絵事によります。

特に葡萄は絶品で、肉筆の大作も多く伝世しています。画業にいそしんだのは50歳を過ぎてから。道人は10代で郷里を離れ、二度と戻ることはありませんでした。時代や理由を思えば、帰郷は許されることではなかったのでしょう。今やその名を知る人は地元でも少ない。

彼を偲んで刀剣を捧ぐ・・。

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